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Azel's Note

とある高校生の数学ノート。あらゆる問題に対する、感覚と論理の双方向からのアプローチの記録。

大学入試別解シリーズ 2005年京大前期 文理共通 第1問

2005年京大理系文系共通・前期第1問です。

{xy}平面上の原点と点{(1,2)}を結ぶ線分(両端を含む)を{L}とする。{L}{y=x^{2}+ax+b}が交点を持つような実数の組{(a,b)}の集合を{ab}平面上に図示せよ。

京大の割にめちゃくちゃ簡単。(そもそも、この別解シリーズの問題はスタンダード数学演習から引用しているので難問なんてないが)。

多分こういう易問って論述部分で相当厳しく採点するんだろう。

この年の問題は他年度に比してかなり簡単だったらしいですが、かの史上最短の問題が出題されるのが翌年。


解法〈I〉[逆像法]

{L:y=2x (0 \leq x \leq 1)}{y=x^{2}+ax+b}のグラフが共有点をもつことは、

これらから{y}を消去した式{x^{2}+(a-2)x+b=0 \cdots (1)}{0 \leq x \leq 1}で実解{x}をもつことに同値

したがって、{(1)}{0 \leq x \leq 1}で実解{x}をもつ{(a,b)}の条件を考えればよい。

{(1)}の左辺を{f(x)}とおくと、

  {f(1)=a+b-1 \cdots (2),f(0)=b \cdots (3)}

{f(x)=(x+ \dfrac{a-2}{2})^{2}-\dfrac{(a-2)^{2}}{4}+b}とできるから、

  {f(x)}のグラフの軸は{x=- \dfrac{a-2}{2} \cdots (4)}

  {f(x)}の最小値は{-\dfrac{(a-2)^{2}}{4}+b \cdots (5)}

{(i) \cdots} {0 \lt x \lt 1}に1つ、その他に1つ実解をもつとき

  {f(0)f(1) \lt 0}であればよく、{(2),(3)}より、{b(a+b-1) \lt 0}

{(ii) \cdots} {0 \lt x \lt 1}に2つ(重解含む)実解をもつとき

  「{f(x)}の最小値が負」かつ「{f(1)>0}かつ{f(0)>0}」かつ「{f(x)}の軸が区間内」であればよく、

  {(2),(3),(4),(5)}から、{-\dfrac{(a-2)^{2}}{2}+b \leq 0}かつ{a+b-1 > 0}かつ{b >0}かつ{0 \lt -\dfrac{a-2}{2} \lt 1}

  整理して{b \leq \dfrac{(a-2)^{2}}{4}}かつ{b > -a+1}かつ{b > 0}かつ{0 \lt a \lt 2}

{(iii) \cdots} {x=0,1}が解のとき

  {f(0)=0}または{f(1)=0}であればよく、{(2),(3)}より、{b=0,b=-a+1}

{(i)}~{(iii)}を総合し、図示すると以下のようになる。(ただし境界を含む)

f:id:AzelAlbarn666:20170522012046p:plain


この解答について

大学への数学では逆手流と呼ばれます。大学への数学は好きですが、既に明確に数学的に定義された名称のある解法に対して分かりにくい別称をつけて説明するところは虫が好きません。

この解法自体は好きです。要らないことを考えずに問答無用で解けるので。


解法〈I'〉[逆像法&補集合の利用]

求める{(a,b)}の集合は、{y=x^{2}+ax+b, L : 2x}{0 \leq x \leq 1}で共有点を持たないような{(a,b)}の集合を、全ての{(a,b)}の組から除いたものである。

したがって以下では、これらの2式を連立させた{x^{2}+(a-2)x+=0 \cdots (1)}{0 \leq x \leq 1}で共有点を持たない条件を考える。

{(1)}の左辺を{f(x)}とおくと、

  {f(1)=a+b-1 \cdots (2),f(0)=b \cdots (3)}

{f(x)=(x+ \dfrac{a-2}{2})^{2}-\dfrac{(a-2)^{2}}{4}+b}とできるから、

  {f(x)}のグラフの軸は{x=- \dfrac{a-2}{2} \cdots (4)}

  {f(x)}の最小値は{-\dfrac{(a-2)^{2}}{4}+b \cdots (5)}

{(i) \cdots} 任意のxについて解を持たないとき

  {f(x)}の最小値が正であればよく、{(5)}から、{b > \dfrac{(a-2)^{2}}{4}}

  図示すると以下のようになる(境界を含まない)

f:id:AzelAlbarn666:20170521225406p:plain

{(ii) \cdots} {x \lt 0,1 \lt x}に1つずつ解をもつとき

  {f(0) \lt 0}かつ{f(1) \lt 0}であればよく、{(2),(3)}より「{b \lt 0}かつ{b \lt -a+1}

  図示すると以下のようになる(境界を含まない)

f:id:AzelAlbarn666:20170521225421p:plain

{(iii) \cdots} {x \lt 0,1 \lt x}のいずれかにのみ解を持つとき

  「{f(x)}のグラフの軸が{x \lt 0,1 \lt x}を満たす」

  かつ「{f(1) > 0}かつ{f(0)>0}」かつ「{f(x)}の最小値が0以下」であればよい

  {(2),(3),(4),(5)}から、「{\dfrac{a-2}{2} \lt 0 , 1 \lt -\dfrac{a-2}{2}}

  かつ「{a+b-1>0}かつ{b> 0}」かつ「{-\dfrac{(a-2)^{2}}{4}}+b \leq 0」となり、

  整理すると「{a \lt 0, 2 \lt a}」かつ「{b > 0}」かつ{b > -a+1}」かつ「{b \leq \dfrac{(a-2)^{2}}{4}}

  図示すると以下のようになる(実線部を含み、軸、白丸、破線部を除く)

f:id:AzelAlbarn666:20170521225440p:plain

{(i)}~{(iii)}はそれぞれ背反だから、求める範囲は、これらを総合したものをab平面全体から除いたもので、図示すると以下のようになる(境界を含む)

f:id:AzelAlbarn666:20170522012046p:plain


この解答について

本質的には上の解答と全く同じですが敢えて補集合を使いました。この問題では完全に無意味で、ただの縛りプレイでしかないですが、場合分けを簡略化できる場合があります。

特に領域図示の問題では今自分が何をしているのか、解答のどの位置に立っているのかを強く意識しないとかえって困難になります。整理しながら解くのが苦手な人にはお勧めしません。

必要以上に丁寧で図が多いのは、自分の現在地を意識するためです。こうでもしないと最後に補集合を取り忘れたりして失敗します。

僕はこういう縛りプレイが場合分けの練習として最適だと思うのですが、全く流行っていませんね。


解法〈II〉[アナログ偏微分(ファクシミリの原理)]

{L:y=2x,y=x^{2}+ax+b}を連立させた式{x^{2}+(a-2)x+b=0 \cdots (1)}について考える。

{(1)}において{a=k}とし、{}値域を求めれば、直線{a=k}上の、条件を満たす点の存在範囲が分かる。

したがって、{k}が全ての実数の範囲を動くときを考えれば、条件を満たす{(a.b)}の存在領域を得られる。

以下では、{f(x)}の値域を考える。

  {f(0)=0 \cdots (2)}

  {f(-\dfrac{k-2}{2})=\dfrac{(k-2)^{2}}{4} \cdots (3)}

  {f(1)=-k+1 \cdots (4)}

最大値は

  {(i) \cdots} {-\dfrac{k-2}{2} \lt 0} すなわち {2 \lt k}のとき   {f(0)}

  {(ii)\cdots} {0 \leq -\dfrac{k-2}{2} \leq  1} すなわち {0 \leq k \leq 2}のとき   {f(-\dfrac{k-2}{2})}

  {(iii) \cdots} {1 \lt -\dfrac{k-2}{2}} すなわち {k \lt 0}のとき   {f(1)}

最小値は

  {(iv) \cdots} {-\dfrac{k-2}{2} \lt \dfrac{1}{2}} すなわち {1 \lt k}のとき   {f(1)}

  {(v) \cdots} {\dfrac{1}{2}\leq \dfrac{k-2}{2}} すなわち {k \leq 1}のとき   {f(0)}

{(i)~(v)}{(2),(3),(4)}より、{f(x)}の値域は

  {0 \leq f(x) \leq -k+1 ~~~~~~~~(k \lt 0)}

  {0 \leq f(x) \leq \dfrac{(k-2)^{2}}{4}~~~~~~~~(0 \leq k \leq 1)}

  {-k+1 \leq f(x) \leq \dfrac{(k-2)^{2}}{4}}~~~~~~~~(1 \lt k \leq 2)

  {-k+1 \leq f(x) \leq 0 ~~~~~~~~(2 \lt k)}

図示すると以下のようになる(境界を含む)

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この解答について

大学への数学ではファクシミリの原理、巷には予選決勝法と呼ばれる解法。

僕はFAXを見たことがないし、予選決勝法というネーミングがなんだか気に食わないのでアナログ偏微分と勝手に命名しています。

解答を見ればわかる通り、{a=k}上における、条件を満たす点の存在範囲は{a=k,0 \lt x \lt 1}におけるbの値域から求められるので、言わば最大最小問題に帰着させているということです。

ステップが多いので個人的には嫌いな解法です。({a=k}とおかずに始めから一般のaについてbの値域を出す等の方法で)各ステップを統合可能なんだけれど、僕の性格上それが気に食わないので。


解法〈III〉[包絡線の利用]

{y=x^{2}+ax+b,L : y=2x}の共有点のx座標は、{x^{2}+(a-2)x+b=0 \cdots (1)}の解xに一致する。

故に、(1)が{(0 \leq x \leq 1)}において解を持つような{(a,b)}の条件を求めればよいが、

{0 \leq x \leq 1}を満たすあるxに対して、(1)はab平面上の直線を表すので、条件を満たす{(a,b)}はこの直線上の点である。

したがって求める領域は、xが{0 \leq x \leq 1}の範囲を動いたとき、(1)のab平面におけるグラフが通過する領域である。

また、xについて平方完成し整理すると{b=-(x+\dfrac{a-2}{2})^{2}+\dfrac{(a-2)^{2}}{4}}とできるから、

直線(1)のグラフは{b=\dfrac{(a-2)^{2}}{4}}と接し、接点のa座標は{a=-2x+2}であり、{0 \leq x \leq 1}のとき、この接点は{0 \leq a \leq 2}を動く。

したがって、求める領域を図示すると以下のようになる。(ただし、境界を含む。)

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この解法について

今回の別解枠。

包絡線はあまり流行ってないですが、有名どころだとFocusGoldや、やさしい理系数学に記載があります。僕自身はどっかで教わったので知ってました。(具体的にどこかは忘れた)

記述が楽という理由で逆像法贔屓なのでたいして使ってなかったのですが、最近Kindle Unlimitedでこれを読んで思い出したので個人的な流行ネタということで試してみました。

包絡線(一般的には通過領域の問題におけるテクニックであるとされる)の、媒介変数と独立変数の読み換えによる他系統問題への応用例という意味では、新しい解法と呼んでも良いかと思います。

もちろん、平方完成による包絡線の導出を知っていても、この問題を見たときに包絡線が応用できることにすぐに気付くにはそこそこセンスが要るので、入試で使うのは非現実的です。あくまでも面白い別解、ということで。

大学入試別解シリーズ 2012東大文系 第2問

簡単な問題。こういう問題ばかり解いてると妙な自信が湧いてきてよくない。先日学校の授業で解かされたのでついでに。

実数tは{0 \lt t \lt 1}を満たすとし、座標平面上の4点{O(0,0),A(0,1),B(1,0),C(t,0)}を考える。また、線分AB上の点Dを{\angle ACO = \angle BCD}となるように定める。tを動かしたときの{\triangle ACD}の面積の最大値を求めよ。

いかにも分数関数が出てきそうな、気持ちの悪い状況設定。文系で出てるんだから微分は使えないし、有名不等式を使わせるに違いない。

因みに、答えの確認のために河合塾の解答を見たら向こうの解答が誤ってました。天下の河合が間違えてちゃダメだ。(結果は正しいが途中式に誤植がある)


解答〈I〉

f:id:AzelAlbarn666:20170521045417p:plain

x軸についてA,Dと対称な点をそれぞれA',D'とする。

メネラウスの定理より、{\dfrac{AA'}{A'O}\cdot \dfrac{OC}{CB}\cdot \dfrac{BD}{DA}=\dfrac{2}{1}\cdot \dfrac{t}{1-t}\cdot \dfrac{BD}{DA}=1}

したがって、{\dfrac{DA}{BA}=\dfrac{DA}{BD+DA}=\dfrac{2t}{(1-t)+2t}=\dfrac{2t}{t+1}}

{\triangle ACD=\dfrac{CB}{OB}\cdot \dfrac{DA}{BA}\cdot \triangle OAB=\dfrac{t(1-t)}{t+1}}

ここで、{\dfrac{t(1-t)}{t+1}=-(t+1)-\dfrac{2}{t+1}+3=3-(t+1+\dfrac{2}{t+1})}とでき

{0 \lt t \lt 1}より、{t+1 > 0}だから、相加・相乗平均の不等式より

{t+1+\dfrac{2}{t+1} \geq 2\sqrt{(t+1)\cdot \dfrac{2}{t+1}}}となり、{t+1=\sqrt{2}}すなわち{t=\sqrt{2}-1}で確かに等号が成立

故に、求める面積の最大値は、{t=\sqrt{2}-1}のときの{3-2\sqrt{2}}


この解答について

これは完全に僕の感覚ですが、対象点を取ってメネラウスの定理を使えばよいとパッと見で思いました。

後付け的な説明ですが、対象点を取るということはすなわちある線分(今回なら{OA})と同じ長さ分、その線分を延長するということであり、言いかえれば自動的に{1:1}或いは{1:2}といった扱いやすい整数比を図中に生み出すということです。

特に本問の場合、Dは単なる分点ではなく、反射によって定められる点ですから、対象点{A'}を取ったとき、{A',C,D}が同一直線状にありますから、メネラウスの定理との相性が良いのは当然のことでしょう。

本問の状況設定ありきの解法なので一般性はもちろんないですが、別解の例としては面白いと思います。


解答〈II〉

OCの傾きは{-\dfrac{1}{t}}だからCDの傾きは{\dfrac{1}{t}}、CDの式を考えると、Cを通ることから{y=\dfrac{1}{t}(x-t)}

Dはこれと{y=-x+1}との交点だから、{\dfrac{1}{t}(x-t)=-x+1}を解くと

Dのx座標{\dfrac{2t}{t+1}}を得られる。また、{\dfrac{DA}{BA}}はDのx座標とBのx座標の比に等しいから、{\dfrac{DA}{BA}=\dfrac{2t}{t+1}}

{\triangle ACD=\dfrac{CB}{OB}\cdot \dfrac{DA}{BA}\cdot \triangle OAB=\dfrac{t(1-t)}{t+1}}であり、

{\dfrac{t(1-t)}{t+1}=-(t+1)-\dfrac{2}{t+1}+3=3-(t+1+\dfrac{2}{t+1})}とできる。

{0 \lt t \lt 1}より、{t+1 > 0}だから、相加・相乗平均の不等式より

{t+1+\dfrac{2}{t+1} \geq 2\sqrt{(t+1)\cdot \dfrac{2}{t+1}}}となり、{t+1=\sqrt{2}}すなわち{t=\sqrt{2}-1}で確かに等号が成立

故に、求める面積の最大値は、{t=\sqrt{2}-1}のときの{3-2\sqrt{2}}


この解答について

完全に代数任せの解法。計算もそんなに面倒ではないので許容範囲内。

思い付きが一切必要なく、ただ面積をtの式で表現するという必要に駆られていればすぐに出てくる解法です。

僕は幾何が好きなあまり反射的に解法〈I〉が出るタイプなのでそっちを推しますが、普通はこう解くのが無難だし、速いでしょう。

どちらの解法を選択するしても、相加相乗平均の利用に気付くか否かが鍵な気がします。

大学入試別解シリーズの投稿開始について

僕は今高3だし、大学受験の予定があるのでわりとピンチだ。

数学は好きでも勉強は大嫌いだから、数学の問題でさえ、決まった量を決まったペースで解くのが大の苦手。

というか別に勉強に限った話でもなく、計画に沿って行動すること自体が非常に苦手。立案と計画は得意なのに。

人に相談されてプランを練ることに関しては、非常に緻密かつ無理のない形のものを設計できるのに、当の自分は決まった時間に登校して決まった時間に下校という日々のリズムでさえ体が許容しない。

かといって今の成績では勉強しないわけにもいかないので、なんとか高いモチベーションを見出して問題を解くしかない。

僕は文章を書くのが好きだから、週3問、ブログに旧帝大入試の自作解答を載せることにした。

普通にやっても面白くないので、河合塾の解答とは違う解答を用意するという条件付きで。

河合塾であることに深い意味はない。予備校は行ったことがないから、物理のエッセンスの出版元ということで唯一接点(?)のある河合にしてみた。

試験において重要なのは一般性の高い、発想力の要らない解答であって、別解なんて不要だと思うが、別解を考えるという作業そのものが数学力の向上に抜群の効果があると思っているので。

(今自分が曲がりなりにも数学が得意なのは、中学生時代から難問に対して幾つも解答を与えたり、普通に解けばよい問題も敢えて対偶を考えたりして遊んでいたからだと信じている)

数学の問題集をほとんど持っていないので、多分解く問題は学校で配られたスタンダード数学演習ばかりからの抜粋になるが、この問題集は略解しか付いていない強気の仕様。

僕が解答を公開することによって、誰か困っている人が解答を見られるようになったら素敵だし…(後付けの理由)

Beyond all restrictions

広く浅くが良いとか、狭く深くが良いとか、そういう論争はよくある。

ステレオタイプな東大京大の学風として、それぞれ「広く浅く」「狭く深く」というのがあるからなのか、こういった論争は東大京大論争にも結び付けられている節があって、明らかにそれを意図した編集のなされたテレビ番組だってある。

非常に単純な疑問。何故「広く深く」を目指さないのだろうか。

いきなり自分の主張を否定するようだが、実際的な話、一人の人間が全知全能すなわち「広く深く」というのは到底不可能だろう。

ならば、「広く浅く」の限界まで、「狭く深く」の限界までなら、一人の人間がたどり着けるというのか。

答えは否ではないか。人が「問題を創造する」という強い力を持った存在である以上、幅にも深さにも限りはない。

どちらの方向に進もうとも、その端点にたどり着くことなどない。虹の根にも頂上にも辿り着けないように。

『「広く浅く」か「狭く深く」か』という決着の見えない論争、決着がついたとしても恐らく誰もが損も得もしない論争に時間を費やすなら、自己満足でいいから、ただ黙って自分の領域を広げていくために時間と労力を使うべきだ。

そしてそうある人は素敵だし、自分もそうありたいと常々思うのであった。

数学自作問題① 幾何

今朝、夢の中で考え事をしているといったような内容の記事を投稿したが、実はあの時も僕はある問題に起こされた。

最近某所に提出するための論文を執筆していて、そのための題材の候補の一つである、ある一般性の高い図形を研究している。

そのせいで夢に関連する図形が出てくることが最近よくあるのだが、今朝もそうだったのだ。

ただ、今朝は論文の成果に繋がりそうなものは一つも得られず、ある面白い問題を得た。

なかなか面白い問題だったし、ついさっき解き終わったので、ここに掲載しておく。

解答が必要な場合は、この記事にコメントするか、右のメールフォームからご連絡ください。

また、何らかの発見があった場合もメールフォームから連絡をいただけるとありがたい。


数学自作問題① 幾何

以下の図の{P}はドラッグで動かせます

鋭角三角形{ABC}において、垂心を{H}、外接円の半径を{R}とし、{BC,CA,AB}の中点を{D,E,F}とする。

また、{\triangle ABC}の外接円の{H}を通る弦{PQ}{\triangle DEF}の外接円との交点を{P}に近い順に{R,S}とする。

{P,Q}の位置によらず{PR \cdot QS}は一定値をとることを示し、この値を{\triangle ABC}の内角の三角比と外接円の半径{r}で表せ。


暗雲と雷光

僕は考えるのが非常に遅い。頭が鈍いのだ。世間一般の平均値と比べれば、考えるのも計算するのも速いと思っているが、数学好きの中ならどちらもだいぶ遅い部類だと思う。

だから長考する。集中して問題を解くというより、常にそのことが意識から消えないのだ。

僕の頭の中に、解決に必要な条件が出そろったとき、黒い靄のようなものが頭の中に立ち込める感じがして、何も見えなくなる。

ついさっきまで解けそうだったのに、黒い雲が考えるのを邪魔して、その向こうの景色を見せようとしてくれしない。

それでも考えていると、雷が落ちたように雲が割れ、その向こうの景色が全てみえる。

でもやはりそれでも解けなくて、今自分が見た答えはすべて消えて行く。何もできずに、ただつぎの稲光を待つしかない。

何度か稲光が起こると、自分の意志で雲をかき消せる(上手く言えないが、かき消すというかかき回して割れ目を探すような感じ)ようになって、さっきの稲妻が作った割れ目を能動的に探せるようになる。

そうして雲をかき消そうとしていると、ふとした瞬間に雲に割れ目が見え、謎が解ける。

中学生くらいから、難問を前にしたとき、夢の中でもそれを考えていることがままある。意識があるときの僕は、上で述べたように黒い靄や雲のようなものを相手に考えているが、夢の中はただひたすら真っ白で、何もない。

本当に真っ白い中、突然、フラッシュを焚いたように答えが見え、そのタイミングで夢から覚める。

問題や定理が僕を「教えてやったから解いてみろ」と言わんばかりにたたき起こしているかのように。

「sinA+sinB+sinC > cosA+cosB+cosC」とその発展型「sinA+sinB > cosA+cosB+cosC」を幾何と代数の視点から考察する。

鋭角三角形{ \displaystyle ABC}において{ \displaystyle \sin A + \sin B+ \sin C > \cos A +\cos B + \cos C}を示せ、という問題がある。

最も一般的と思われる解法は、最大角をAに指定した上で{ \displaystyle \sin A> \cos A}を示し、和積公式を用いて{ \displaystyle \sin B+ \sin C > \cos B+\cos C}を示し辺々を加えるというものだ。

僕はあまり和積公式が好きではない。和積公式を使うべきとされる場面では、幾何的な性質が無視されることが多いからだ。

幾何という対称性と精緻性の宇宙がその後ろにあるにもかかわらず、(ごく一部の人間をのぞく、大多数の人間にとって)背景の不明瞭な代数的解法が最善策であるかのように教えることが、多くの高校生の三角比・三角関数嫌いを加速させている気もする。

三角関数は本来は幾何を由来とする概念なのに、それを用いるときに幾何を意識している高校生は非常に少ないように思う。言ってしまえば教師もだ。

僕は幾何フリークの一人として、この傾向を好きになれない。やはり三角比の問は、幾何を背景においてこそだと思う。

そこで、上の問題を出来るだけ幾何的なアプローチで解き、それと代数的な考察を結び付けてみることにした。

また、下に記す考察から得られる発展型{\sin A + \sin B >\cos A+ \cos B+ \cos C}も、幾何と代数の視点からそれぞれ考察してみた。

・sinA+sinB+sinC > cosA+cosB+cosCの証明


・幾何による証明

まずは幾何的な解法から。

「一般性を失わない」条件の追加は、本質的な部分を意識しないと難しいが、使いこなせると証明を大幅に簡略化できる。

「一般性を失わない」というのはつまり、問題で提示されている条件に対し不干渉ということだ。

例えば以下の解答では、本問が角度についてのみ言及する問であることを踏まえて、長さを固定している。


f:id:AzelAlbarn666:20170219203507j:plain

{\displaystyle \triangle ABC }の外心を{\displaystyle O}{\displaystyle BC,CA,AB}の中点をそれぞれ{ \displaystyle D,E,F}とする。

ここで、{ \displaystyle \triangle ABC}の外接円の半径を1としても一般性を失わない。

円周角の定理より、{ \displaystyle \angle BOD = A}であり、従って{ \displaystyle BD=\sin A}

中点連結定理より、{ \displaystyle EF=BD=\sin A}、同様にして{ \displaystyle FD=\sin B},{ \displaystyle DE= \sin C}

また、{ \displaystyle OD= \cos A}、同様にして{ \displaystyle OE = \cos B,OF= \cos C}

ここで、{\displaystyle \angle EOF= B+C > \frac{\pi}{2}}であるから、

{ \displaystyle \triangle EOF}の最大辺は{ \displaystyle EF}で、従って{\displaystyle \sin A > \cos B}、同様に{ \displaystyle \sin B > \cos C,\sin C > \cos A}

これらの式を辺々加えると、{ \displaystyle \sin A + \sin B + \sin C >\cos A + \cos B + \cos C}が示される。


自然な解答だが、和積公式を使うものより遥かに美しい。

不等式を発展させる上で重要なことは{\displaystyle O}{ \displaystyle \triangle DEF}の垂心であることだ。

これによって、この記事で考察する不等式たちを{\displaystyle \triangle DEF}の垂心と各頂点との距離の和に関する式に帰着させることが出来る。


・代数による証明

5人にこの問題を見せれば4人はこういう解法を使うだろう。僕はあまり好きではない。


{ \triangle ABC}における最大角は{A}であるとする。

{ \triangle ABC}は鋭角三角形だから、{\displaystyle  \frac{\pi}{2} > A \geqq \frac{\pi}{3}}

故に、{\sin A > \cos A \cdots (1)}

和積公式より、{\sin B +\sin C -(\cos B +\cos C)= 2\cos \dfrac{B-C}{2}(\sin\dfrac{B+C}{2}-\cos\dfrac{B+C}{2})}

ここで、{B+C > \dfrac{\pi}{2}}であるから、{ \sin\dfrac{B+C}{2} > \cos\dfrac{B+C}{2} }

これと{\cos \dfrac{B-C}{2} \neq 0}より、{\sin B +\sin C > \cos B +\cos C \cdots (2)}

{(1),(2)}より、{ \displaystyle \sin A + \sin B+ \sin C > \cos A +\cos B + \cos C}


悔しいが、やはり和積公式は便利だ。テクニックとして確立されている。

実際大学入試では、和積公式がテクニックとして普及していなければ試験時間内に解ききることが難しい問も多い。


・幾何と代数の対応

ここからが本題だ。本項では幾何的な解法と代数的な解法の類似性を指摘し、その奥に潜む同値性の認識を確かにしたい。

数学において、同じ問題に別の手法からアプローチすることは、音楽において、同じ曲を別の楽器で奏でることに似ている。

楽器を弾くことはそれだけでも楽しいが、複数の楽器の音色があれば、曲はより美しくなる。数学でも同じことが言えると思う。


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この図は、上の幾何による証明の項で用いた図に必要な加工を施して拡大したものだ。

なお、代数による証明との折り合いのために、角{A}が最大角となるように作図してある。

上の2つの証明にはすぐにわかる共通点がある。「B+Cが鈍角」という条件を使っているところだ。

まず、幾何による証明で用いた手法を思い返してほしい。

そこでは{ \displaystyle \triangle EOF}の最大辺が{ \displaystyle EF}であることを用いて、{\displaystyle \sin A > \cos B}を示した。

このとき、{ \triangle EOF}が鈍角{\angle EOF}を最大角とする三角形であることを用いた。

つまり、言い替えれば、この図でいう>を示すために「B+Cが鈍角」を用いたのだ。

次に、代数による証明での途中式を引用すると、

{\sin B +\sin C -(\cos B +\cos C)= 2\cos \dfrac{B-C}{2}(\sin\dfrac{B+C}{2}-\cos\dfrac{B+C}{2})}であり、

{ \sin\dfrac{B+C}{2} > \cos\dfrac{B+C}{2} }を示せれば良いのだった。

この、{ \sin\dfrac{B+C}{2}}{ \cos\dfrac{B+C}{2}}にそれぞれ対応するのは、この図のだ。

つまり{ \dfrac{B+C}{2} > \dfrac{\pi}{4} \Leftrightarrow B+C > \dfrac{\pi}{2} }を示せばよく、これも「B+Cが鈍角」という条件に帰着するのだ。

これで幾何と代数双方の証明の共通性を図形的に記述できただろう。


・sinA+sinB > cosA+cosB+cosCの証明


・幾何による証明

さて、ここで上の項の{ \triangle DEF}をみていると、どうも{\sin A + \sin B >\cos A+ \cos B+ \cos C}や、

{\sin B + \sin C >\cos A+ \cos B+ \cos C}も成立しているように見える。

角をうまく選ばずとも成立するあたりが美しい。まずはトレミーの不等式を用いて証明してみる。


以下の図は{ \displaystyle \sin A + \sin B + \sin C >\cos A + \cos B + \cos C}での解答図を拡大し必要な点を追記したものである。

点の定義などは同様のものを用いているため、必要なければ特記しない。

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{\displaystyle XE=OE,YF=OF}を満たす2点{\displaystyle X,Y}をそれぞれ{\displaystyle DE,FD}上にとる。

ここで図のように、角度{\displaystyle \alpha,\beta,\gamma}を定めると、{\displaystyle \angle XOY= \alpha +\beta +\gamma= \frac{\pi}{2}}となるから{\displaystyle XY>OX,OY}

トレミーの不等式より、{\displaystyle OX\cdot DY +OY \cdot DX > XY \cdot OD}なので、

従って{\displaystyle XY \cdot DY + XY \cdot DX > XY \cdot OD}、辺々を{ \displaystyle XY}で割って{\displaystyle DY+DX>OD}

辺々に{XE=OE,YF=OF}を加えると、

{\displaystyle DE+FD=XE+YF+DX+DY>OD+OE+OF}

{ \displaystyle FD=\sin B,DE= \sin C, OD= \cos A,OE = \cos B,OF= \cos C}であるから、

{\sin B + \sin C >\cos A+ \cos B+ \cos C}が示された。

同様にして{\sin A + \sin B >\cos A+ \cos B+ \cos C}等も示せる。


あまり美しくない。とりあえず等しい長さをとって、公式で強引に示しただけだ。

トレミーの不等式は高校では習わないし、受験数学におけるテクニックとしても一般的ではない。

特に受験数学にこだわるわけではないが、やはり美しいとは言い難い。

他の証明を考えるのは非常に難しく、周辺の考察も含め、なかなかに時間を要した。

以下が発見した第二証明である。点の設定の背景は、これまでの証明のものを引き継いでいる。

熟考の末に図が整頓されたために簡単に思えるが、非常に複雑な背景のもと生まれた図形である。


以下の図は動かせます、{D,E,F}をドラッグで動かしてみてください。

GeoGebraがうまく動作しない人向けに静止画の図もおいておく。

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図のような点{P,Q,R,X}を考える。

{DE+FD>OD+OE+OF \Leftrightarrow DE+PR>PE+ER+RD}を示せばよい。

(つまり+>++を言いたい。)

三角不等式より{EX+XR>ER~~~~\cdots (1)}

{\angle XRD = \angle XEP = \dfrac{\pi}{2}}より、{XD>RD,XP>EP~~~~\cdots (2)}

{(1),(2)}より、{DE+PR>PE+ER+RD}

よって{DE+FD>OD+OE+OF}は示された。


図形の対称性を活用した証明法。

トレミーの不等式を用いるものに比べてより美しく、知識も初等的なもので済む。

恐らく、これ以上簡単な初等的説明を与えるのは不可能に近いのではないか(同等のものは探せばあると思う)。


・代数による証明

{ \displaystyle \sin A + \sin B+ \sin C > \cos A +\cos B + \cos C}の和積公式を用いた証明はあまり美しくなかった。

しかしこの不等式は非常に美しく示すことができる。積を使って { \cos C}を合成するところが要だ。


{A+B > \dfrac{\pi}{2}}より、{ \dfrac{\pi}{2} > A > \dfrac{\pi}{2}-B}であるから、

{\sin A > \sin (\dfrac{\pi}{2}-B) \Leftrightarrow \sin A > \cos B }、同様に{\sin B > \cos A}

従って、{ (1- \cos A)(1- \cos B)>(1-\sin A)(1-\sin B)}

展開して整理すると、{\sin A + \sin B > \cos A + \cos B - (\cos A \cos B - \sin A \sin B)}となり、

加法定理の式を用いれば{\cos A \cos B - \sin A \sin B = \cos(A+B)=-\cos C}だから

従って、{\sin A + \sin B >\cos A+ \cos B+ \cos C}


非常に抽象的な話題かつ詭弁だが、

最初の問の代数による証明で、{\sin A}{cos A}の組から考え始めたように、

同じ条件を引数にもつもの同士の対応関係を考えるのが最も素直な解き方だと思う。

しかし実際はこの証明の{\sin A}{\cos B}のように、

別々の引数をもつものを対応させた方が簡単に済む場合も多いと思う。

三角形の内角を偏角とする三角関数などは特にだ。

恐らく、引数どうしがある程度互いに制限をかけているのが理由の一つなのだと思う。

三角形の内角なら{A+B+C=\pi}などの条件がこの「制限」にあたる。

イメージとしては、前者の解き方は「線対称」、後者の解き方は「点対称」のようだ。

後者は巴のイメージもしっくりくる。


・総括

恐らく多くの高校生が幾何的な背景を意識せずに解くであろう三角関数の不等式を、

その原点に立ち返って幾何的に考察することで、深い理解を得ることが出来た。

幾何という図示によって、視覚的に新定理を予想し、非常に簡単な図形でそれを示すこともできた。

僕自身色々と得るものがあったので非常に満足している。