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Azel's Note

とある高校生の雑記帳。あらゆるテーマに対する、感覚と論理の双方向からのアプローチの記録。

Beyond all restrictions

広く浅くが良いとか、狭く深くが良いとか、そういう論争はよくある。

ステレオタイプな東大京大の学風として、それぞれ「広く浅く」「狭く深く」というのがあるからなのか、こういった論争は東大京大論争にも結び付けられている節があって、明らかにそれを意図した編集のなされたテレビ番組だってある。

非常に単純な疑問。何故「広く深く」を目指さないのだろうか。

いきなり自分の主張を否定するようだが、実際的な話、一人の人間が全知全能すなわち「広く深く」というのは到底不可能だろう。

ならば、「広く浅く」の限界まで、「狭く深く」の限界までなら、一人の人間がたどり着けるというのか。

答えは否ではないか。人が「問題を創造する」という強い力を持った存在である以上、幅にも深さにも限りはない。

どちらの方向に進もうとも、その端点にたどり着くことなどない。虹の根にも頂上にも辿り着けないように。

『「広く浅く」か「狭く深く」か』という決着の見えない論争、決着がついたとしても恐らく誰もが損も得もしない論争に時間を費やすなら、自己満足でいいから、ただ黙って自分の領域を広げていくために時間と労力を使うべきだ。

そしてそうある人は素敵だし、自分もそうありたいと常々思うのであった。

数学自作問題① 幾何

数学 数学-自作問題

今朝、夢の中で考え事をしているといったような内容の記事を投稿したが、実はあの時も僕はある問題に起こされた。

最近某所に提出するための論文を執筆していて、そのための題材の候補の一つである、ある一般性の高い図形を研究している。

そのせいで夢に関連する図形が出てくることが最近よくあるのだが、今朝もそうだったのだ。

ただ、今朝は論文の成果に繋がりそうなものは一つも得られず、ある面白い問題を得た。

なかなか面白い問題だったし、ついさっき解き終わったので、ここに掲載しておく。

解答が必要な場合は、この記事にコメントするか、右のメールフォームからご連絡ください。

また、何らかの発見があった場合もメールフォームから連絡をいただけるとありがたい。


数学自作問題① 幾何

以下の図の{P}はドラッグで動かせます

鋭角三角形{ABC}において、垂心を{H}、外接円の半径を{R}とし、{BC,CA,AB}の中点を{D,E,F}とする。

また、{\triangle ABC}の外接円の{H}を通る弦{PQ}{\triangle DEF}の外接円との交点を{P}に近い順に{R,S}とする。

{P,Q}の位置によらず{PR \cdot QS}は一定値をとることを示し、この値を{\triangle ABC}の内角の三角比と外接円の半径{r}で表せ。


暗雲と雷光

日記

僕は考えるのが非常に遅い。頭が鈍いのだ。世間一般の平均値と比べれば、考えるのも計算するのも速いと思っているが、数学好きの中ならどちらもだいぶ遅い部類だと思う。

だから長考する。集中して問題を解くというより、常にそのことが意識から消えないのだ。

僕の頭の中に、解決に必要な条件が出そろったとき、黒い靄のようなものが頭の中に立ち込める感じがして、何も見えなくなる。

ついさっきまで解けそうだったのに、黒い雲が考えるのを邪魔して、その向こうの景色を見せようとしてくれしない。

それでも考えていると、雷が落ちたように雲が割れ、その向こうの景色が全てみえる。

でもやはりそれでも解けなくて、今自分が見た答えはすべて消えて行く。何もできずに、ただつぎの稲光を待つしかない。

何度か稲光が起こると、自分の意志で雲をかき消せる(上手く言えないが、かき消すというかかき回して割れ目を探すような感じ)ようになって、さっきの稲妻が作った割れ目を能動的に探せるようになる。

そうして雲をかき消そうとしていると、ふとした瞬間に雲に割れ目が見え、謎が解ける。

中学生くらいから、難問を前にしたとき、夢の中でもそれを考えていることがままある。意識があるときの僕は、上で述べたように黒い靄や雲のようなものを相手に考えているが、夢の中はただひたすら真っ白で、何もない。

本当に真っ白い中、突然、フラッシュを焚いたように答えが見え、そのタイミングで夢から覚める。

問題や定理が僕を「教えてやったから解いてみろ」と言わんばかりにたたき起こしているかのように。

「sinA+sinB+sinC > cosA+cosB+cosC」とその発展型「sinA+sinB > cosA+cosB+cosC」を幾何と代数の視点から考察する。

数学 数学-幾何

鋭角三角形{ \displaystyle ABC}において{ \displaystyle \sin A + \sin B+ \sin C > \cos A +\cos B + \cos C}を示せ、という問題がある。

最も一般的と思われる解法は、最大角をAに指定した上で{ \displaystyle \sin A> \cos A}を示し、和積公式を用いて{ \displaystyle \sin B+ \sin C > \cos B+\cos C}を示し辺々を加えるというものだ。

僕はあまり和積公式が好きではない。和積公式を使うべきとされる場面では、幾何的な性質が無視されることが多いからだ。

幾何という対称性と精緻性の宇宙がその後ろにあるにもかかわらず、(ごく一部の人間をのぞく、大多数の人間にとって)背景の不明瞭な代数的解法が最善策であるかのように教えることが、多くの高校生の三角比・三角関数嫌いを加速させている気もする。

三角関数は本来は幾何を由来とする概念なのに、それを用いるときに幾何を意識している高校生は非常に少ないように思う。言ってしまえば教師もだ。

僕は幾何フリークの一人として、この傾向を好きになれない。やはり三角比の問は、幾何を背景においてこそだと思う。

そこで、上の問題を出来るだけ幾何的なアプローチで解き、それと代数的な考察を結び付けてみることにした。

また、下に記す考察から得られる発展型{\sin A + \sin B >\cos A+ \cos B+ \cos C}も、幾何と代数の視点からそれぞれ考察してみた。

・sinA+sinB+sinC > cosA+cosB+cosCの証明


・幾何による証明

まずは幾何的な解法から。

「一般性を失わない」条件の追加は、本質的な部分を意識しないと難しいが、使いこなせると証明を大幅に簡略化できる。

「一般性を失わない」というのはつまり、問題で提示されている条件に対し不干渉ということだ。

例えば以下の解答では、本問が角度についてのみ言及する問であることを踏まえて、長さを固定している。


f:id:AzelAlbarn666:20170219203507j:plain

{\displaystyle \triangle ABC }の外心を{\displaystyle O}{\displaystyle BC,CA,AB}の中点をそれぞれ{ \displaystyle D,E,F}とする。

ここで、{ \displaystyle \triangle ABC}の外接円の半径を1としても一般性を失わない。

円周角の定理より、{ \displaystyle \angle BOD = A}であり、従って{ \displaystyle BD=\sin A}

中点連結定理より、{ \displaystyle EF=BD=\sin A}、同様にして{ \displaystyle FD=\sin B},{ \displaystyle DE= \sin C}

また、{ \displaystyle OD= \cos A}、同様にして{ \displaystyle OE = \cos B,OF= \cos C}

ここで、{\displaystyle \angle EOF= B+C > \frac{\pi}{2}}であるから、

{ \displaystyle \triangle EOF}の最大辺は{ \displaystyle EF}で、従って{\displaystyle \sin A > \cos B}、同様に{ \displaystyle \sin B > \cos C,\sin C > \cos A}

これらの式を辺々加えると、{ \displaystyle \sin A + \sin B + \sin C >\cos A + \cos B + \cos C}が示される。


自然な解答だが、和積公式を使うものより遥かに美しい。

不等式を発展させる上で重要なことは{\displaystyle O}{ \displaystyle \triangle DEF}の垂心であることだ。

これによって、この記事で考察する不等式たちを{\displaystyle \triangle DEF}の垂心と各頂点との距離の和に関する式に帰着させることが出来る。


・代数による証明

5人にこの問題を見せれば4人はこういう解法を使うだろう。僕はあまり好きではない。


{ \triangle ABC}における最大角は{A}であるとする。

{ \triangle ABC}は鋭角三角形だから、{\displaystyle  \frac{\pi}{2} > A \geqq \frac{\pi}{3}}

故に、{\sin A > \cos A \cdots (1)}

和積公式より、{\sin B +\sin C -(\cos B +\cos C)= 2\cos \dfrac{B-C}{2}(\sin\dfrac{B+C}{2}-\cos\dfrac{B+C}{2})}

ここで、{B+C > \dfrac{\pi}{2}}であるから、{ \sin\dfrac{B+C}{2} > \cos\dfrac{B+C}{2} }

これと{\cos \dfrac{B-C}{2} \neq 0}より、{\sin B +\sin C > \cos B +\cos C \cdots (2)}

{(1),(2)}より、{ \displaystyle \sin A + \sin B+ \sin C > \cos A +\cos B + \cos C}


悔しいが、やはり和積公式は便利だ。テクニックとして確立されている。

実際大学入試では、和積公式がテクニックとして普及していなければ試験時間内に解ききることが難しい問も多い。


・幾何と代数の対応

ここからが本題だ。本項では幾何的な解法と代数的な解法の類似性を指摘し、その奥に潜む同値性の認識を確かにしたい。

数学において、同じ問題に別の手法からアプローチすることは、音楽において、同じ曲を別の楽器で奏でることに似ている。

楽器を弾くことはそれだけでも楽しいが、複数の楽器の音色があれば、曲はより美しくなる。数学でも同じことが言えると思う。


f:id:AzelAlbarn666:20170219210324j:plain

この図は、上の幾何による証明の項で用いた図に必要な加工を施して拡大したものだ。

なお、代数による証明との折り合いのために、角{A}が最大角となるように作図してある。

上の2つの証明にはすぐにわかる共通点がある。「B+Cが鈍角」という条件を使っているところだ。

まず、幾何による証明で用いた手法を思い返してほしい。

そこでは{ \displaystyle \triangle EOF}の最大辺が{ \displaystyle EF}であることを用いて、{\displaystyle \sin A > \cos B}を示した。

このとき、{ \triangle EOF}が鈍角{\angle EOF}を最大角とする三角形であることを用いた。

つまり、言い替えれば、この図でいう>を示すために「B+Cが鈍角」を用いたのだ。

次に、代数による証明での途中式を引用すると、

{\sin B +\sin C -(\cos B +\cos C)= 2\cos \dfrac{B-C}{2}(\sin\dfrac{B+C}{2}-\cos\dfrac{B+C}{2})}であり、

{ \sin\dfrac{B+C}{2} > \cos\dfrac{B+C}{2} }を示せれば良いのだった。

この、{ \sin\dfrac{B+C}{2}}{ \cos\dfrac{B+C}{2}}にそれぞれ対応するのは、この図のだ。

つまり{ \dfrac{B+C}{2} > \dfrac{\pi}{4} \Leftrightarrow B+C > \dfrac{\pi}{2} }を示せばよく、これも「B+Cが鈍角」という条件に帰着するのだ。

これで幾何と代数双方の証明の共通性を図形的に記述できただろう。


・sinA+sinB > cosA+cosB+cosCの証明


・幾何による証明

さて、ここで上の項の{ \triangle DEF}をみていると、どうも{\sin A + \sin B >\cos A+ \cos B+ \cos C}や、

{\sin B + \sin C >\cos A+ \cos B+ \cos C}も成立しているように見える。

角をうまく選ばずとも成立するあたりが美しい。まずはトレミーの不等式を用いて証明してみる。


以下の図は{ \displaystyle \sin A + \sin B + \sin C >\cos A + \cos B + \cos C}での解答図を拡大し必要な点を追記したものである。

点の定義などは同様のものを用いているため、必要なければ特記しない。

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{\displaystyle XE=OE,YF=OF}を満たす2点{\displaystyle X,Y}をそれぞれ{\displaystyle DE,FD}上にとる。

ここで図のように、角度{\displaystyle \alpha,\beta,\gamma}を定めると、{\displaystyle \angle XOY= \alpha +\beta +\gamma= \frac{\pi}{2}}となるから{\displaystyle XY>OX,OY}

トレミーの不等式より、{\displaystyle OX\cdot DY +OY \cdot DX > XY \cdot OD}なので、

従って{\displaystyle XY \cdot DY + XY \cdot DX > XY \cdot OD}、辺々を{ \displaystyle XY}で割って{\displaystyle DY+DX>OD}

辺々に{XE=OE,YF=OF}を加えると、

{\displaystyle DE+FD=XE+YF+DX+DY>OD+OE+OF}

{ \displaystyle FD=\sin B,DE= \sin C, OD= \cos A,OE = \cos B,OF= \cos C}であるから、

{\sin B + \sin C >\cos A+ \cos B+ \cos C}が示された。

同様にして{\sin A + \sin B >\cos A+ \cos B+ \cos C}等も示せる。


あまり美しくない。とりあえず等しい長さをとって、公式で強引に示しただけだ。

トレミーの不等式は高校では習わないし、受験数学におけるテクニックとしても一般的ではない。

特に受験数学にこだわるわけではないが、やはり美しいとは言い難い。

他の証明を考えるのは非常に難しく、周辺の考察も含め、なかなかに時間を要した。

以下が発見した第二証明である。点の設定の背景は、これまでの証明のものを引き継いでいる。

熟考の末に図が整頓されたために簡単に思えるが、非常に複雑な背景のもと生まれた図形である。


以下の図は動かせます、{D,E,F}をドラッグで動かしてみてください。

GeoGebraがうまく動作しない人向けに静止画の図もおいておく。

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図のような点{P,Q,R,X}を考える。

{DE+FD>OD+OE+OF \Leftrightarrow DE+PR>PE+ER+RD}を示せばよい。

(つまり+>++を言いたい。)

三角不等式より{EX+XR>ER~~~~\cdots (1)}

{\angle XRD = \angle XEP = \dfrac{\pi}{2}}より、{XD>RD,XP>EP~~~~\cdots (2)}

{(1),(2)}より、{DE+PR>PE+ER+RD}

よって{DE+FD>OD+OE+OF}は示された。


図形の対称性を活用した証明法。

トレミーの不等式を用いるものに比べてより美しく、知識も初等的なもので済む。

恐らく、これ以上簡単な初等的説明を与えるのは不可能に近いのではないか(同等のものは探せばあると思う)。


・代数による証明

{ \displaystyle \sin A + \sin B+ \sin C > \cos A +\cos B + \cos C}の和積公式を用いた証明はあまり美しくなかった。

しかしこの不等式は非常に美しく示すことができる。積を使って { \cos C}を合成するところが要だ。


{A+B > \dfrac{\pi}{2}}より、{ \dfrac{\pi}{2} > A > \dfrac{\pi}{2}-B}であるから、

{\sin A > \sin (\dfrac{\pi}{2}-B) \Leftrightarrow \sin A > \cos B }、同様に{\sin B > \cos A}

従って、{ (1- \cos A)(1- \cos B)>(1-\sin A)(1-\sin B)}

展開して整理すると、{\sin A + \sin B > \cos A + \cos B - (\cos A \cos B - \sin A \sin B)}となり、

加法定理の式を用いれば{\cos A \cos B - \sin A \sin B = \cos(A+B)=-\cos C}だから

従って、{\sin A + \sin B >\cos A+ \cos B+ \cos C}


非常に抽象的な話題かつ詭弁だが、

最初の問の代数による証明で、{\sin A}{cos A}の組から考え始めたように、

同じ条件を引数にもつもの同士の対応関係を考えるのが最も素直な解き方だと思う。

しかし実際はこの証明の{\sin A}{\cos B}のように、

別々の引数をもつものを対応させた方が簡単に済む場合も多いと思う。

三角形の内角を偏角とする三角関数などは特にだ。

恐らく、引数どうしがある程度互いに制限をかけているのが理由の一つなのだと思う。

三角形の内角なら{A+B+C=\pi}などの条件がこの「制限」にあたる。

イメージとしては、前者の解き方は「線対称」、後者の解き方は「点対称」のようだ。

後者は巴のイメージもしっくりくる。


・総括

恐らく多くの高校生が幾何的な背景を意識せずに解くであろう三角関数の不等式を、

その原点に立ち返って幾何的に考察することで、深い理解を得ることが出来た。

幾何という図示によって、視覚的に新定理を予想し、非常に簡単な図形でそれを示すこともできた。

僕自身色々と得るものがあったので非常に満足している。

2016年度JMO予選問題 8番

数学-幾何 数学

先日、友人からある問題を出題された。以下がそれだ。

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初めて見る形式の問題であり、一瞬警戒したものの、少し考えてみると、semi-perimeterが活躍する問であることが容易に分かった。

解き終わってみると、ふと出典が気になった。適当に問題文の条件を検索してみると、どうもJMO予選問題だったようだ。 流石はJMOだと思う、変な形式の出題を考えるものだ。

解答に要した時間は8分ほどであった。数学オリンピックの予選問題は1問15分が目安といわれるから、まあ許容範囲内ではあるだろう。

ネットに見られる解法に比べても遜色ないようだから、ここに紹介しておく。

以下が僕の解法だ。


{ \displaystyle D= \omega \cap BC}{ \displaystyle E= \omega \cap CA}{ \displaystyle F= \omega \cap AB} とし、

{ \displaystyle AE=p~,~BF=q~,~CD=r~,~AX=k } とおく。

方冪の定理より、{ \displaystyle p^{2}=4k^{2} } 、従って{ \displaystyle  p=2k }

ここで、内接円の半径は1であるから、{ \displaystyle |\triangle ABC|=\frac{AB+BC+CA}{2}=p+q+r }

条件の比例式より、{ \displaystyle q+r=10k } であるから、{ |\triangle ABC|=12k }

{ \displaystyle A} から { \displaystyle BC} に下ろした垂線の足を { \displaystyle H } とすると、{ \displaystyle |\triangle ABC|=\frac{BC \cdot AH}{2} } より、{ \displaystyle AH=\frac{12}{5} }

ここで、{ \displaystyle DY}{ \displaystyle \omega} の直径となるような点 { \displaystyle Y} を考えると、

{ \displaystyle \triangle ADH \sim \triangle DYX} より、{ \displaystyle k=\frac {\sqrt{10}}{5} } であるから、従って、{ \displaystyle XD=3k=\frac{3\sqrt{10}}{5} }


semi-perimeterの利用がミソである。テクニックの話だから、あまり知性ある解き方ではないかもしれないが、内接円に関係する問ではしばしば活躍する。

(思い付きで記事を書いたので、落とし方が全くわからなくなった。僕には文章力がない…)

幾何学におけるカルノーの定理の簡潔な証明

数学 数学-幾何

かつて、三角関数に関するある難問を解く過程で、単位円を利用して幾何的にアプローチしたところ、副産物として美しい定理を得た…..と思ったが、変形したところ、カルノーの定理と同値だった、ということがあった。

美しい定理を独立に発見したのでなかったことは残念だが、計算過程の有象無象の中に既知の美しい定理を見出せたことは幸運だった。

先日資料を整理している時、当時のメモを発見した。 今回はこの一連の論理によって得たカルノーの定理を記事にする。

カルノーの定理とは、

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『鋭角三角形{ \displaystyle ABC } の外心を { \displaystyle O} とし、{ \displaystyle O} から各辺に下ろした垂線の足を上図のように { \displaystyle D~,~E~,~F } とする。 このとき、{ \displaystyle \triangle ABC } の外接円の半径を { \displaystyle R } 、内接円の半径を{ \displaystyle r} とすると、

{ \displaystyle OD+OE+OF=R+r } が成立する。』

というもの。よく出来すぎていて俄には信じ難いくらいだ。

Google検索でヒットする幾何的な証明の大半が、各頂点から下ろした垂線を用いるものだったし、自分がかつて行った証明もそのようなものだった。

発見した証明を以下に。


{ \displaystyle s = \frac{AB+BC+CA}{2} } とする。

中点連結定理より、{ \displaystyle EF=\frac{BC}{2} } 、トレミーの定理より、{ \displaystyle R \cdot \frac{BC}{2}=OF \cdot \frac{CA}{2}+ OE \cdot \frac{AB}{2} }

同様にして、{ \displaystyle R \cdot \frac{CA}{2}=OD \cdot \frac{BA}{2}+ OF \cdot \frac{BC}{2}~,~R \cdot \frac{AB}{2}=OE \cdot \frac{BC}{2}+ OD \cdot \frac{CA}{2} }

これらの辺々を加えると、{ \displaystyle  Rs = OD(s-\frac{BC}{2})+OE(s-\frac{CA}{2})+OF(s-\frac{AB}{2}) }

変形して、{ \displaystyle (OD+OE+OF)s= Rs+(OD \cdot \frac{BC}{2}+OE \cdot \frac{CA}{2}+OF \cdot \frac{AB}{2})}

ここで、{ \displaystyle  OD \cdot \frac{BC}{2}+OE \cdot \frac{CA}{2}+OF \cdot \frac{AB}{2}=rs=|\triangle ABC|} であるから、

{ \displaystyle (OD+OE+OF)s= Rs+rs} 、辺々を{ \displaystyle s } で割って、{ \displaystyle OD+OE+OF=R+r}


本当に偶発的に発生したものだが、完成度は高く感じる。「気付いてしまえば簡単」な証明こそ理想だ。 semi-perimeterがこんなところでも活躍するとは恐るべしだ。この証明法なら、対称性を上手く利用できるので大幅に楽である。

上で示したものは鋭角三角形という条件付きであったが、符号付き距離を導入することによって鈍角三角形にも拡張できる。

割愛するが、恐らくは殆ど同様に証明ができるだろう。さらに、合同角の概念を導入すれば、証明の統合が可能かもしれない。

近いうちに、その証明とカルノーの定理の系をまとめた記事を書くだろう。

高校数学におけるチェビシェフ多項式

数学 数学-三角関数

三角比/三角関数は便利だ。そしてなにより、美しい。

だが、僕の周りを見る限りでは、三角関数が苦手な人間は多い。数学アレルギーの原因の一つでもあるように思う。

ただ、本当に便利だし、興味深い性質を秘めている。三角関数に関連する入試問題も、そのバックグラウンドまで考えられるととても面白いものが多い。

とくにcosの性質は驚くべきものが多い。今回はそのひとつである、チェビシェフ多項式の話だ。

・チェビシェフ多項式の存在証明

一般的事実として、以下がある。

任意の自然数 { \displaystyle n} について、{ \displaystyle \cos n \theta}{ \displaystyle \cos \theta }{ \displaystyle n} 次式で表せる。

加法定理を知っていれば、「なんとなくそんな気がする」ような事実である。

この、 { \displaystyle \cos n\theta}{ \displaystyle \cos \theta } による表現 { \displaystyle T_{n}} をチェビシェフ多項式という。

(この由来であるチェビシェフという人は、幅広い分野に業績のある19世紀の人らしく、確かにこれ以外に幾つか名を聞いたことがあるように思う。(同一人物かどうかは定かでないが))

証明せずに済ますには少し大きすぎる定理なので、上の事実を証明してみよう。


{ \displaystyle n=1} のとき、{ \displaystyle T_{1}=\cos \theta } であり、

{ \displaystyle n=2} のとき、{ \displaystyle T_{2}=2\cos^{2} \theta -1 } であるから、{ \displaystyle n=1,2 }で確かに存在。

{ \displaystyle n=k-1,k} のとき、{ \displaystyle T_{k-1}}{ \displaystyle T_k } が存在すると仮定する。

加法定理より、

{ \displaystyle \cos(k\theta + \theta) = \cos k\theta \cos \theta - \sin k\theta \sin \theta}

{ \displaystyle \cos(k\theta - \theta) = \cos k\theta \cos \theta + \sin k\theta \sin \theta}

辺々を加えると、{ \displaystyle \cos(k\theta + \theta) + \cos(k\theta - \theta) = 2\cos k\theta \cos \theta }

これはすなわち、{ \displaystyle \cos(k\theta + \theta) + T_{k-1} = 2\cos \theta T_k }

{ \displaystyle T_{k-1}}{ \displaystyle T_k }{ \displaystyle \cos \theta} で表現可能であるから、

{ \displaystyle \cos(k\theta + \theta) }{ \displaystyle \cos \theta} で表現可能、従って{ \displaystyle T_{k+1} }は存在する。

よって、上の議論より、任意の自然数 { \displaystyle n }{ \displaystyle T_n }の存在が示された。 □


以上のとおりである。

余談だが、証明終了の宣言として、皆さんは何を使うのだろうか。

僕はこういう電子媒体に証明を記述するときはハルモス記号をよく使うのだが、模擬試験や定期テストでは通じるか不安なので「よって題意は示された」とか「等式は示された」と文で書くことにしている。

・チェビシェフ多項式の漸化式

上の途中式に現れるとおり、{ \displaystyle T_n } の一般項は隣接三項間漸化式に従う。

MathJaxのトラブルに見舞われたためにこれだけ画像になってしまったが、これが { \displaystyle T_n } を表現する漸化式である。

(同じ式に下小文字付きの項が3つ以上あると、なぜかMathJaxがうまく機能してくれない、解決法を知っている人がいたらぜひ教えてください。)

また、{ \displaystyle \theta = 2k \pi~~~ (k \in \mathbb{Z})  }のとき、{ \displaystyle \cos\theta = \cos n\theta =1 } であるから、

{ \displaystyle T_n } の各項の係数の和は1になるし、{ \displaystyle T_a - T_b = 0 }{ \displaystyle a~,~b} の値によらずこれを解に持つ。

・チェビシェフ多項式の利用①

大学入試にも、チェビシェフ多項式と関連の深い問題が多く出題されている。

僕の高校ではFocusGoldという問題集を買わされるのだが、それにはこんな問題が記載されていた。 

{ \displaystyle \cos \frac{2}{7} \pi + \cos \frac{4}{7} \pi + \cos \frac{6}{7} \pi = a ~,~  \cos \frac{2}{7} \pi  \cos \frac{4}{7} \pi  \cos \frac{6}{7} \pi = b }とする。(3) { \displaystyle a~,~b } を求めよ。』

(1)(2)は誘導なので省略した。出典は東京慈恵会医科大学。 和と積を求めよと言われている以上、何らかの方程式の解と係数の関係を用いるのであろうことは簡単に察しが付くし、その方程式はチェビシェフ多項式から簡単に導ける。

(Tips; 和と積を求める問題や、和と積の何方か一方が与えられた状態でもう一方を求めるような問いは、解と係数の関係、相加・相乗平均の不等式、対称式を用いると楽な場合が多い)

ちなみに、僕はあまり医大の入試が好きではない。解き方も、それを見抜くことも簡単なのに、計算だけが面倒なものが多いからだ。 その点で京都大学の問題は逆で、とても面白いものが多い。

以下は解答。


{ \displaystyle \cos \frac{2}{7}\pi \neq \cos \frac{4}{7}\pi \neq \cos \frac{6}{7}\pi \neq1    ~~~~~ \cdots(\ast)} である。

従って、これら3つを解に持つような三次方程式を考え、解と係数の関係から値を導けばよい。

{ \displaystyle \cos \frac{2}{7}\pi ~,~ \cos \frac{4}{7}\pi ~,~ \cos \frac{6}{7}\pi}偏角{ \displaystyle \theta} とすると、

{ \displaystyle 7\theta=2k\pi ~~(k \in \mathbb{Z})} であるから、これらは方程式{ \displaystyle \cos3\theta = \cos4\theta} の解。

方程式{ \displaystyle \cos3\theta = \cos4\theta} について、チェビシェフ多項式とその性質より、

{ \displaystyle \cos4\theta = 2\cos\theta \cos3\theta - 2\cos^{2}\theta+1 }であるから、

{ \displaystyle 2\cos\theta\cos3\theta-\cos3\theta - 2\cos^{2}\theta+1=0 }

{ \displaystyle \cos3\theta(2\cos\theta-1)-2\cos^{2}\theta+1=0 }

{ \displaystyle 8\cos^{4}\theta-4\cos^{3}\theta-8\cos^{2}\theta+3\cos\theta+1=0}

ここで、上の方程式は { \displaystyle \cos\theta-1} を因数に持ち、また{ \displaystyle (\ast) } が言えるから、

上の式の辺々を{ \displaystyle \cos\theta-1 } で割った式

{ \displaystyle 8\cos^{3}\theta+4\cos^{2}\theta-4\cos\theta-1=0}{ \displaystyle \cos \frac{2}{7}\pi ~,~ \cos \frac{4}{7}\pi ~,~ \cos \frac{6}{7}\pi} を解に持つ。

三次方程式の解と係数の関係より、

{ \displaystyle a = \cos \frac{2}{7} \pi + \cos \frac{4}{7} \pi + \cos \frac{6}{7} \pi = -\frac{1}{2} }

{ \displaystyle b = \cos \frac{2}{7} \pi  \cos \frac{4}{7} \pi  \cos \frac{6}{7} \pi = \frac{1}{8} }


複素数を用いた解答も考えられるが、今回はチェビシェフ多項式が主役のため割愛。

次回は京大の入試問題を解いてみる。