Azel's Note

ある人間の数学ノート。

高校入試の図形問題 龍谷大平安

塾の受験生(中学生)に中々賢い子が居るようで、彼女が先生に質問しに来た問題が中々難しいとして、先生と僕の間で話題に上った。

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Bは線分AC上の点で、ABEが正三角形となるように点Eをとる。また、ACについてEと同じ側に、BD=CD, \angle BDC =40度となるように点Dをとり、AC,AD,DEの中点をそれぞれL,M,Nとする。

(1) \angle LMN を求めよ。

(2) LM:BDを最も簡単な整数の比で表せ。

(3) \triangle LMN, \triangle BDEの面積の比を最も簡単な整数の比で表せ。

(1) 中点連結定理より、LM \parallel CD , MN \parallel AE

平行線の同位角は等しいので、\angle ALM = \angle ACD=70,\angle DMN=\angle DAE

外角定理より、 \angle DML= \angle ALM + \angle MAL=70+\angle DAL

したがって、\angle LMN=\angle DML + \angle DMN=\angle 70 + \angle DAL + \angle DAE

\triangle ABEは正三角形だから、、\angle DAL+ \angle DAE=60  したがって、\angle LMN=130

(2) 中点連結定理より2LM =CD

CD=BDだから、2LM=BD したがって、LM:BD=1:2

(3)

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図のように、\triangle BDE \equiv \triangle AFEとなる点Fを取り、DLL側に2倍に延長した端点をGとする。

このとき、四角形DAGCは対角線が互いの中点で交わる四角形であることから平行四辺形であることが言え、したがってDC=AGである。

また、中点連結定理より、LM=GA,2MN=AE,2NL=EGであるから、\triangle LMN \sim \triangle GAEで、

相似比は1:2、面積比は1:4 (\Rightarrow \triangle LMN =\dfrac{1}{4} \triangle GAE)

したがって、\angle GAE=\angle LMN=130が言え、\angle EAF=50だから、F,A,Gは同一直線上にある。

故に、\triangle GAE,\triangle AFEは底辺と高さがそれぞれ等しく、面積も等しい。(\Rightarrow \dfrac{\triangle GAE}{\triangle AFE}=1)

\dfrac{\triangle LMN}{\triangle BDE}=\dfrac{\triangle LMN}{\triangle AFE}=\dfrac{\dfrac{1}{4} \triangle GAE}{\triangle AFE}=\dfrac{1}{4}

初等幾何学として見れば、相似変換・合同変換の古典的な王道問題なので、少し突っ込んで勉強した者なら「パターン」としてさえ解けるレベルですが、高校入試としてどのくらいの難易度なのかは不明(僕自身詳しくないので)。

・余談と(3)の別解

相似変換系の入試問題の模範解答を見る度にいつも思うんですけど、面積は位置に依らない性質ですから(当たり前!)、面積のみを聞かれている限りは図から切り離して考えても良いと思います。 というか、むしろ僕にはこっちの方が素朴かつ柔軟な"良い"解法に思えます。上の僕の解答は、問題集の模範解答にありそうな解法で解いたものなので平面変換をこじつけてありますが、別に無理に図の中で頑張る必要はありません。切り離して観察して考えれば十分。

数学科の学生が東大実戦模試の難問をタイムアタックしてみた&速く解くコツを解説

この春から数学科(東大ではない)に入学した僕ですが、いろいろな事情で殆ど大学に通えておらず、なんだかんだ殆ど数学を触らない日々が続いています。 趣味から遠ざかるのは精神衛生上良いことではないので、久しぶりに数学でも触ろうと思いYoutubeで良い題材を探したところ

www.youtube.com

面白そうな問題を発見。 再生開始後即ストップして僕もタイムアタックしてみました。結果から言うと15分1秒です。(追記 : ちなみにこの記事を書くのにはほぼ4時間かかりました! これぞ本末転倒! )

所要時間はアバウトに前半一枚8分、後半一枚7分くらいです。図示に時間をかけすぎたので15分をオーバーしました...

上の答案を見て分かる通り、特に記述を意識して解いていないことから、本番同様の記述答案を作成するとなると25分そこらはかかると思います。考えるのが速い人はもう少し速く解けます。僕は考えるのにもそれなりに時間を使ってしまった。


◆ 問題

二つのグラフC:y=ax^2+bx (a>0,b<0),D:y=x^3が共有点を3つ持つとする。C,Dで囲まれる二つの領域の面積について、左側の面積と右側の面積の比が5:32であるようにCが動くとき、Cxy平面上での通過領域を求め、図示せよ。(駿台東大実戦模試)

※ 動画から要旨を汲んで適当に問題文を補完したので、原文とは表現が異なるかもしれません。


◆ 解答と講評

◆ 解答

C,Dが3つの共有点を持つための条件は、x^3-ax^2-bx=0が異なる3つの実数解を持つことである。

この式はx=0を解に持つので、左辺のxでない因数x^2 -ax -bx=0でない根を持つことがこのための条件であるが、b \lt 0よりx=0は明らかに根でないので、x^2-ax-b=0の判別式からa^2 +4b >0とすれば必要十分。

更にx^2 -ax-bの根を小さい順に\alpha,\betaとおくと、

この式の値がx=0で正であり(\because b \lt 0)、かつ\dfrac{a}{2}>0 ~(\because a >0)であることから0 \lt \alpha \lt \betaが言える。

以下この下で、"左側の面積"をS、"右側の面積"をTとおく。*1

部分積分法を繰り返し用いて

\displaystyle{ \int x(x-\alpha)(x-\beta) dx = \dfrac{1}{2}x^2 (x-\alpha)(x-\beta)- \dfrac{1}{6}x^3 \{ (x-\beta) + (x-\alpha) \} +\dfrac{1}{24} x^4 \cdot 2 +C \cdots (\star)}

とできるので、実際に計算すればS=\dfrac{1}{12}\alpha ^3 (2\beta-\alpha),T=\dfrac{1}{12}(\beta ^2 -\alpha^2)(\beta -\alpha)^2を得られる。*2

S:T=5:32だから、\alpha^3 (2\beta -\alpha):(\beta^2 -\alpha^2)(\beta -\alpha)^2=5:32

t=\dfrac{\beta}{\alpha} (t>1)と置くと、*3 5(t+1)(t-1)^3=32(2t-1)とでき、*4 これはt=3を解に持つ *5

更にs=t-1 (s>0)と置き *6 整理すれば(s-2)(5s^3 +20s^2 +40s+16)=0

s>0に対し明らかに5s^3 +20s^2 +40s+16>0であるので、この式のs>0なる解はs=2のみであり、これを与えるtt=3である。

ここで、根と係数の関係より\alpha+\beta=a,\alpha \beta=-bが得られ、これとt=\dfrac{\beta}{\alpha}=3から、\alpha=\dfrac{1}{4}a,\beta=\dfrac{3}{4}aがわかる。

したがって、b=-\dfrac{3}{16}a^2がわかり、\alpha,\betaの存在条件a^2+4b >0が常に成立することも分かる。

したがって、題意の領域を得るには実数aa>0の範囲を動くとき、y=ax^2-\dfrac{3}{16}a^2xxy平面上で掃過(sweep)する領域を求めればよいとわかる。*7

aについて整理すると3xa^2-16x^2a+16y=3x(a-\dfrac{8}{3}x)^2 -\dfrac{64}{3}x^3+16y=0 であり、この方程式がa>0に少なくとも1つの解を持つためのx,yの条件が求める通過領域を表すので、以下これを求めることを考える。左辺をf(a)とおくと、

(i) 3x=0すなわちx=0のとき

 代入して計算すると、y=0となるので、条件(x,y)=(0,0) \cdots (a)を得る

(ii) 3x>0すなわちx>0のとき

-(A) 二実解を持ち、解の一方のみがa>0を満たすとき

 「f(0)=0 \land \dfrac{16}{3}x>0\lor f(0)\lt 0すなわちf(0) \leq 0 (\because x>0)

-(B) 全ての解がa>0を満たすとき

 f(0)>0 \land \dfrac{8}{3}x >0 \land (16x^2)^2 -4\cdot 3\cdot 16 xy  \geq 0 すなわちf(0)>0 \land y \leq \dfrac{4}{3}x^3 (\because x>0)

(A),(B)併せて、x>0 \land y \leq \dfrac{4}{3}x^3 \cdots (b)を得る

(iii) 3x \lt 0すなわちx \lt 0のとき

-(A) 二実解を持ち、解の一方のみがa>0を満たすとき

 「f(0)=0 \land \dfrac{16}{3}x >0 \lor f(0)> 0 すなわちf(0) > 0 (\because x \lt 0)

-(B) 全ての解がa>0を満たすとき

 f(0)\lt 0 \land \dfrac{18}{3}x >0 \land  (16x^2)^2 -4\cdot 3\cdot 16 xy  \geq 0であればよいが、x \lt 0はこれを満たさない。

(A),(B)併せて、x<0 \land y>0 \cdots (c)を得る

(a),(b),(c)を図示すると下図のようになり、これが求める領域である。(ただし実線・黒点を含み、破線を含まない)


どのように考えながら解いたのかを補足するために、記事最下部に非常に長い脚注を付けてあります。解答の随所にあるページ内リンクで該当する脚注に飛べるようにしてあるのでご覧ください。


◆ 講評

タイトルでは便宜上「難問」と呼びましたが、実はこの問題はさほど難しい問題ではありません。

解答の流れとしては「左:右=5:32という捉えにくい条件を、具体的で分かりやすいa,bの条件に変形する→通過領域の問題として定式化し直して解く」になるわけですが、問題の骨格たる後半は実は楽勝で、東大模試を受けるような学力層ならほぼ全員が解けるであろうものです。

大変なのは、本来枝葉の部分のはずの前半部で、多くの人が計算で挫折したと思われます。処理は有りふれたものですが、工夫して計算しないと大変に混乱させられる計算です。

つまりこの問題は「解き方が分からない」のではなくて「解き方は分かるが、時間内に実行できない」という意味で厄介なのです。実際、元の動画でも「計算がえぐい」問題として取り挙げられています。見方を変えれば、この計算さえ楽に終わらせられれば特に難しくはないということです。

動画では、多項式を部分的に展開し、因数x-\alpha,x-\betaを持つ項とそうでない項に分けてから積分するという数学II的な方法*8でこれを解決されていました。一方僕の解法は数学III的な方法である部分積分法を用いて解いていますので、数IIIを履修していないと使えないという点では劣っています。(数IIIを履修しない文系の学生がこの動画より早く解くのは神懸かり的な発想力、或いは計算力がない限りは事実上不可能だと思います。もしこの動画を上回るペースで解けるなら、非常に恵まれた能力があります。理転して数学科に進むことを勧めます笑。)


◆ 速く解くためのコツ


◆ 部分積分による面積計算

センター試験対策などで、\dfrac{1}{3},\dfrac{1}{6},\dfrac{1}{12},\cdots公式なるものを覚えたり覚えさせられたりした、或いはしていませんか。

これらの公式とほぼ同じ速さで計算できる上に、暗記が不要で応用も効くのが部分積分による面積計算です。

数IIIで習う公式に{\displaystyle \int f'(x)g(x) dx=f(x)g(x)- \int f(x)g'(x)dx } (部分積分法)があります。

これを繰り返し用いれば、俗に瞬間部分積分と呼ばれる積分が可能になります。(これについては裏技!瞬間部分積分! | 受験の月を読んでください。)

この方法のメリットは、被積分関数因数分解された形のまま積分できることです。展開しなくて済むし、代入計算が楽になるのです。例えば本問ではf(x)=xとして積分g(x)=(x-\alpha)(x-\beta)として微分することで、(\star)を得られ、S,Tの計算を

{\displaystyle S=\int_0^\alpha x(x-\alpha)(x-\beta)dx= \left[  \dfrac{1}{2}x^2 (x-\alpha)(x-\beta)- \dfrac{1}{6}x^3 \{ (x-\beta) + (x-\alpha) \} +\dfrac{1}{24} x^4 \cdot 2 \right]_0^\alpha  }

=0-\dfrac{1}{6}\alpha ^3(\alpha-\beta)+\dfrac{1}{12}\alpha ^4+0+0+0=\dfrac{1}{12}\alpha ^3 (2\beta-\alpha)

{\displaystyle T=-\int_\alpha^\beta x(x-\alpha)(x-\beta)dx=- \left[  \dfrac{1}{2}x^2 (x-\alpha)(x-\beta)- \dfrac{1}{6}x^3 \{ (x-\beta) + (x-\alpha) \} +\dfrac{1}{24} x^4 \cdot 2 \right]_\alpha^\beta  }

=0+\dfrac{1}{6}\beta^3 (\beta-\alpha)-\dfrac{1}{12}\beta ^4 +0 -\dfrac{1}{6}(\alpha-\beta)+\dfrac{1}{12}\alpha^4=\dfrac{1}{12}(\beta ^2 -\alpha^2)(\beta -\alpha)^2

と出来るのです。展開するより圧倒的に速いですよね。

◆ 置き換え

多分この解法の一番馴染みのない部分は「t=\dfrac{\beta}{\alpha}」の置き換えです。脚注にも書きましたが、要となる部分なので本文でも説明しておきます。

全体を通して、「t=\dfrac{\beta}{\alpha}」と「s=t-1」の二回の置き換えを行っています。

前者は斉次式(同次式)の置き換え、後者は構造の置き換え(と僕が呼んでいるもの)です。

基本的に"数I・II的な"置き換えは三種類に分類でき、それぞれの概要は以下の通りです。

1. 構造の置き換え

 同様の構造が複数現れるときに、よりマクロな構造を浮き彫りにするために行うもの。例えば(x^2+2x)^2 -2(x^2+2x)+1因数分解するとき、一度A=x^2+2xと置いてから

 (x^2+2x)^2 -2(x^2+2x)+1=(A+1)^2=(x^2+2x+1)^2=(x+1)^4とする場合がありますが、これはこのタイプです。

 この例のように因数分解なら誰でも出来るのですが、実際に解答の簡略化のために用いることのできる人は意外と居ません。例えば、

全ての実数xに対し、x^3 -3x^2+7=a(x-2)^3 +b(x-2)^2+c(x-2)+dが成立するように実数a,b,c,dを定めよ。(福島大学)

 のような問題では、多くの人が右辺の各項を展開しようとしますが、t=x-2などとおけば左辺の簡単な展開だけで済みます。試してみてください。

 (x=2を代入→両辺をx微分する→x=2を代入の繰り返しで必要条件からa,b,c,dを求めるのが一番ありがちかつ楽な解法なので、実は置き換えの必然性はありません。)

2. 対称式の置き換え

 一般的にはx+y,xyx+y+z,xy+yz+zx,xyzを新しい文字として置き換えるものをこのように呼ぶようですが、柔軟に解釈すれば、高校数学に頻出する置き換えの殆どをこれに分類できます。

 t=\sin \theta + \cos \theta (三角関数の最大最小でよくあるアレ)も対称式の置き換えだし、t=x+\dfrac{1}{x} (相反方程式でよくあるアレ)もt=a^x+a^{-x} (指数関数の定番、何故かセンター試験で出題されたことがない)も対称式の置き換えに分類できます。

 どれも積が見当たらないので対称式だとは一見分かりませんが、これらは元々一変数のモノを置き換えているので、最終的に表れるものも一変数になっているだけです。例えばt=\sin \theta + \cos \thetaでは、積は\sin \theta \cos \theta=\dfrac{t^2 -1}{2}と出来ますし、最後の二つは単に積が1になります。なお、最後の二つは根本的には同種の置き換えと考えて良いです。(\because xa^{x}を交換すれば同じである)

3. 斉次式(同次式)の置き換え

 上で述べたように多くの置き換えは対称式として捉えられますが、斉次式の置き換えはこれらとは少し毛色が違うものなので、あまり馴染みが無いのだと思います。

 二変数分数関数の最大最小問題で「k=\dfrac{x}{y}」のような置き換えを見たことはありませんか。実はこれは斉次式の置き換えの数少ない例かつ最も多く見かける例です。脚注でも述べているように、1995年東大数学第一問など、難関大入試ではたまに出題される物のようです。

 理念としては「ある文字及び文字群に着目したとき、各項の次数が全て等しければ一文字消去可能」というものです。具体的な例は同次式② 比の置換 | 受験の月を参照。

数式処理の簡略化のためには、この3種類の置き換えが適用出来ないか常に考えながら進むのが重要となります。(と言いつつも、僕は常に気を張っているわけではなく、経験則と論理で「この文字を消去したら対称式になるはず」とか「部分積分して代入したから全項斉次のはず」と言う風に、要所要所で展開を予測しながら解くタイプです。つまり慣れと勘。)

*1:ここまでの議論は有り触れたことしかしていません。"左側の面積"と"右側の面積"が存在するための前提となる条件を判別式から求めただけです。強いて言えば0 \lt \alpha \lt \betaが重要で、この前提が無いとS,Tを求めるための積分式が変化してしまい議論が破綻します。

*2:原始関数を(\star)の形にして定積分を行えば、多くの因数が0となるので非常に簡単な式になります。これはその結果を因数分解しただけです。大幅に省略したような印象を受けるかもしれませんが、実際に計算すれば容易に分かるので試してみてください。なお、上のような形の原始関数は部分積分法を繰り返し用いることにより容易に得られます。詳細は裏技!瞬間部分積分! | 受験の月を参照されたし。裏技と呼ばれてこそいますが、高校数学の範囲内で十分明らかな式です。動画のコメント欄に「β関数の積分公式使えば楽勝」みたいなのがありましたが、オイラー積分の一般型を覚えてる人なんて本当に居るんですね、驚愕に値します。もちろん僕は覚えてないです...

*3:斉次式、同次式の置き換えです。そもそもコレを知らない人が割と多いと思います。進学校でない限り授業で扱わないのがこの一因で、僕も高校で習った覚えはありません。僕自身は1995年の東大の問題を通して初めて知りました。名古屋大の過去問にも斉次式の置き換えが事実上必須のものがあったと思います。この問題の元ネタの動画(最初に貼った動画)のコメント欄にも斉次式の置き換えに驚愕するコメントが大変多いですが、旧帝大を受験するなら知っておくべきことです。僕の経験上、整数問題でも応用できる場面があります。この事実を載せた文献は見たことがないのであまり自信がありませんが笑。この置換の詳細は同次式② 比の置換 | 受験の月参照。

なお、t=\dfrac{\alpha}{\beta}ともt=\dfrac{\beta}{\alpha}とも置くことが出来るのに後者を選択したのは、前者だと0 \lt t \lt 1になってしまいtが整数になり得なくなるからです。もちろん最終的に得られる結果は変わりませんが、tが整数になり得ないと、tに具体的な値を代入して解を探すという作業が面倒になります。t=\dfrac{1}{3}を代入して計算しなきゃならないのは嫌ですよね。まあ、逆数で考えるなり通分するなりすれば同様の議論に帰着するんですが、それなら初めからt=\dfrac{\beta}{\alpha}と置く方が手っ取り早いという考えです。

*4:この時点で、問題は一時的にt>1 \land 2t-1:(t+1)(t-1)^3=5:32を満たす実数tを求めるものへと再定式化されています。

*5:ここでは、tは整数になるだろうと見当をつけ、整数解tを求める作業を頭の中で行っています。決して闇雲に代入したり、閃きで解いているわけではありません。2t-1が必ず奇数になるので、まず右辺の2の指数は5に確定します。したがって左辺5(t-1)^3(t+1)が2を"ちょうど"5つ因数に持つ必要がありますが、t-1が2で2回以上割り切れる場合、左辺の2の指数が6以上になり不適です。左辺全体の2の指数は「t-1の2の指数×3+t+1の2の指数」に一致しますが、t-1の2の指数は1でなければならないので、t+1の2の指数は2でなければなりません。したがってt+1=4が第一の候補となり、実際にこれが解となります。

*6: 別にtのまま解いても構わないんですが、展開が面倒だし、t=3を解として求めた時点で、これ以上t>1を満たす解がないことを予想していたので、このときの実質的な目標はこの事実を示すことでした。仮に別の値も解になったら、通過領域の計算が単純に二倍になり、幾らなんでも面倒すぎるからです。予想ではなく希望的観測と言った方が良いかもしれませんが笑。したがってこの式が他に条件を満たす解を持たないことさえ言えればよく、t固執する意味はないので、考えやすいようt-1を別の文字で置いてみました。t-1を選んだ理由は、単純に計算しやすく、しかもt>1 \Leftrightarrow s>0となり議論が楽になるからです。

*7:これでやっと前半部の目的「単なる通過領域の問題への定式化」が終わりです。ここまで来れば東大受験者で無くとも多くの人が解けるであろう。ここからは、大雑把には順像法で捉えるか逆像法で捉えるかの二択になるわけですが、式が簡単なので逆像法を用います。(※ あまりに複雑な式では、解の存在範囲を求めるために微分や定数分離を用いる必要があり、逆像法による議論ではしんどいこともあるので、楽な解法ではあるものの、せいぜい二次方程式の解の配置に帰着できる範囲で用いるのが賢明だと僕は思います。)

*8: "\dfrac{1}{6}公式"の証明で用いる手法として有名ですね。

整数の良問 APU(立命館アジア太平洋大学)2017

ふとしたことから中々の良問を発見したので紹介しておきます。 出典は近隣の普通科高校の課題。出典の出典(原典)は今年の立命館アジア太平洋大学の入試問題。

自然数nの正の約数のうち、2番目に大きいものを\ll n \ggと表す。ただし、2 \leq n \leq 100とする。
(1) \displaystyle{ \sum_{k=2}^8 \ll k \gg}を求めよ。
(2) \displaystyle{ \sum_{k=2}^{20} \ll 3k \gg}を求めよ。
(3) \displaystyle{ \ll n \gg=7}を満たすnを全て求めよ。
(4) \ll n^2 \gg =nならば\ll n \gg=1であることを証明せよ。

二番目に大きい約数を表示する記号を定義する、奇異な設定の問題です。こんな記号、かなり良く勉強した人でない限りは初見でしょうから、適応力と理解力が試される良問だと思います。もちろん僕もこんな問題は初めて見ました。ガウス記号がいい加減使い古されてきているので、"思考力を問う"新傾向入試の風にも押され、今後の入試では類題が流行るかもしれません。

(余談 : この問題を課題として出題した高校、実はあまり偏差値が高くありません。その割に(いや、だからこそ?)、「一週間でノート一冊分の問題を解くこと」等の膨大な課題が出題されるので、課題に追われてグロッキー状態の生徒をよく見かけます。この課題も、学生のレベルに比して著しく難易度が高いように思います。少し詰め込み教育寄りと言うか、先生の意欲が空回りしている印象を受けます。)


・解答

自分で解くまで見たくない方もいると思うので折り畳んであります。僕の解答ですから、誤りを発見された場合はぜひお知らせください。

ラマヌジャン・ナーゲルの定理を背景に持つ入試問題を見つけた話

今回の記事は中身がありません笑。ある面白い定理を背景にしたと思われる入試問題を見つけたというだけの記事です。

最近、Ramanujan-Nagell's theoremなる定理を知りました。

『方程式2^{n}-7=x^{2}自然数(n,x)(3,1),(4,3),(5,5),(7,11),(15,181)のみである。』

という定理です。えらく具体的な定理だなあ。定理って言うと大抵、「a^{n}+b=x^{a}自然数解の個数は(何らかの関数)個である」ってくらい抽象的なモノだと思うんですけど。

名前から分かるように、かの奇才ラマヌジャンの星の数より多い業績の一つらしい。ナーゲルは三角形のナーゲル点のナーゲルと同じ人かな?

ラマヌジャンと言えば、証明もなしに定理を生み出す暴れ馬のような数学者です。

どこかでこの不定方程式を見たことがある気がしたので、心当たりを調べたところ

(1) 6以上の整数nに対して2^{n}-7 > n^{2}が成り立つことを示せ。
(2) p^{q}=q^{p}+7を満たす素数p,qの組(p,q)を全て求めよ。

去年の東北大の入試でした、以上。これ以上書くことがない笑。

ここで終わるのも出オチが過ぎるので一応解いておくことにします。

(1)は最も愚直な解法を選ぶなら、f(x)=2^{x}-x^{2}-7とおいて、

 f'(x) = \log_e 2 \cdot 2 ^{x} -2x , f''(x) = (\log_e 2)^{2} \cdot 2^{x} -2だから、

 f'(x)x \geq 6で単調増加であり、f'(6)>0よりf(x)x \geq 6で単調増加。

 f(6)>0より、x \geq 6f(x)>0 よって題意が示された...とすればよいはずです。

nを離散量として考えてよいにもかかわらず、わざわざ連続量のxをおいて微分するのは流石にオーバーキルなので、模範解答的には数学的帰納法を用いるのが正解なのかもしれません。連続量における微分は、離散量では、比をとって1と比較したり、階差をとって0と比較することに相当するので、そちらを採るのもありでしょう。

(2)は少し形が崩れているものの、まあ恐らくはラマヌジャン・ナーゲルの定理を背景に問題を作ったのでしょう。

もし入試数学がルールなしの殴り合いだったら、「ラマヌジャン・ナーゲルの定理より(p,q)=(2,5)である」って言えば済みますが、これだとちょっと身も蓋もないのでちゃんと解きます笑。

p,qの偶奇が一致する場合、両辺の偶奇が一致しないので、p,qの一方は2です。

(1)の結果を利用するためにp=2を示したいと思うのが自然で、これはq \neq 2を示すことに同等です。

q=2とするとp^{2}=2^{p}+7となるのですが、結局これを示すのにも(1)が使えます。

(1)より、p \leq 5なのでp=2,3,5を試せばよく、実際全て不適です。

したがってp=2とでき、2^{q}=q^{2}+7となる素数qを探せばよく、

(1)より、q \leq 5なのでq=2,3,5を試せばよく、適当なものはq=5のみ。

故に答えは(p,q)=(2,5)です。当然これはラマヌジャン・ナーゲルの定理に合致します。

京大の整数問題を因数分解だけで解く試み

驚異の本日3投稿目。

夏の間体調を壊し、8月の後半は完全に寝込んでいたので数学から遠ざかってしまっていました。

また体調を崩さないうちに一気に記事を書いています笑。

最近出会ったこんな問題があります。

任意の整数nに対し、n^{9}-n^{3}9で割り切れることを示せ。 (2001年 京都大学)

まあ普通、9を法とした剰余が0になることを言うのでしょう。簡単な問題です。


剰余類を用いた普通の解法

あらゆる整数nは、適当な整数m,k(=-1,0,1)を用いてn=3m+kと表せ、その平方はn^{2}=9m^{2}+6km+k^{2}と表せる。

n^{9}-n^{3}=n^{2}(n-1)n(n+1)(n^{2}+n+1)(n^{2}-n+1)であり、k=0すなわちn=3mのとき、これは9の倍数となる。

n-1,n,n+1のいずれかは3の倍数であるから、k=\pm 1のとき、

(n^{2}+n+1)(n^{2}-n+1)が3の倍数であることが言えればよい。

(n^{2}+n+1)(n^{2}-n+1) \equiv (k^{2}+k+1)(k^{2}-k+1)  \mod 3

k=-1,1のいずれの場合も、これは3の倍数となる。\therefore 題意は示された。


多くの人がこう解くでしょう。

しかし、剰余類を用いてはならないなんてことになったらどうでしょうか。そんなシチュエーションが発生するのかはさておき笑。

一気に難しくなりますが、取りつく島もないわけではありません。

というのも、『連続したm個の整数の積はm!の倍数である』という有明(そして自明)な事実があるからです。

上の解答でもこの事実を用いました。

この事実は、連続したm個の整数のいずれかはmの倍数であり、いずれかはm-1の倍数であり、いずれかはm-2の倍数であり……という考えからわかりますね。

ある数が9で割り切れることを示すには、6!で割り切れることを示せば十分です。6!は9の倍数ですからね。

したがって、ある数を連続した6個の整数の積として表現できれば、その数が9で割り切れることが言えます。

これを利用すれば、実質因数分解のみで解決することも可能かもしれないと思ったので、実際にやってみました。


因数分解による解法

以下では、合同式の法を9とする。

また、連続したm個の整数の積がm!の倍数になる事実を断りなく用いることがある。

n^{9}-n^{3}

=n^{2}(n-1)n(n+1)(n^{2}+n+1)(n^{2}-n+1)

=(n^{2}(n-2)(n-1)n(n+1)(n+2)+n^{2}(n-1)n(n+1)(n+5) )(n^{2}-n+1)

=n^{2}(n-2)(n-1)n(n+1)(n+2)(n^{2}-9-n+10)+n^{2}(n-1)n(n+1)(n+5)(n^{2}-4-n+5)

=n^{2}(n-3)(n-2)(n-1)n(n+1)(n+2)(n+3)-n^{2}(n-2)(n-1)n(n+1)(n+2)(n-10)

+n^{2}(n-2)(n-1)n(n+1)(n+2)(n+5)-n^{2}(n-1)n(n+1)(n+5)(n-5)

\equiv -n^{2}(n-2)(n-1)n(n+1)(n+2)(n-10)+n^{2}(n-2)(n-1)n(n+1)(n+2)(n+5)

-n^{2}(n-1)n(n+1)(n+5)(n-5)

=15n^{2}(n-2)(n-1)n(n+1)(n+2)-n^{2}(n-1)n(n+1)(n^{2}-25)

\equiv -n^{2}(n-1)n(n+1)(n^{2}-4-21)

=-n^{2}(n-2)(n-1)n(n+1)(n+2)+21n^{2}(n-1)n(n+1)

\equiv -n^{2}(n-2)(n-1)n(n+1)(n+2)

=-(n^{2}-9+9)(n-2)(n-1)n(n+1)(n+2)

=-(n-3)(n-2)(n-1)n(n+1)(n+2)(n+3)-9(n-2)(n-1)n(n+1)(n+2)

\equiv 0

よって題意は示された。


一応解決はしましたね笑。整数の連続積を表す記号を考えて導入すれば見かけ上はもうちょっとマシな解答が出来ると思います。

=n^{2}(n-3)(n-2)(n-1)n(n+1)(n+2)(n+3)-n^{2}(n-2)(n-1)n(n+1)(n+2)(n-10)

+n^{2}(n-2)(n-1)n(n+1)(n+2)(n+5)-n^{2}(n-1)n(n+1)(n+5)(n-5)

の次の変形を

\equiv -n^{2}(n-1)n(n+1)(n+5)(n-5)

に留めておいて、n-1 \equiv n+5 \mod 3,n+1 \equiv n-5 \mod 3を用いて(n-1)n(n+1)(n+5)(n-5)が9の倍数であることを示せばここで解答を終えられるのですが、結局気合で計算しきる道を選びました。

まあ、ネタですからね、こんなものは。実用性を求めてはいけない。実際の入試でこういう解き方をした猛者は居るのだろうか。

絶対に二度とやりたくないです。剰余類の有難みが分かりました。

積分で活躍する、整式の瞬間部分分数分解法(Heaviside cover-up method)

積分ってしんどいですよね。何がって計算が。

中堅以上の大学の入試問題だと、部分分数分解して積分しなければならない場面が割と多いです。

この部分分数分解が曲者で、それなりに面倒。

この記事では、数値代入法を用いて瞬間的に部分分数分解するテクニックを紹介します。

(詳しい話はこの記事の最後に書きますが、どうやらこの方法は「Heaviside cover-up method」と呼ばれるものらしいです。)


・分母が重根を持たない場合(普通の部分分数分解)

具体的な例

f:id:AzelAlbarn666:20170614031054p:plain


何故この方法で部分分数分解できるのか

最初に述べたように、部分分数分解は扱いやすい恒等式を作る作業です。したがって、各項の分子を求める作業は、恒等式の係数決定と同様の方法を応用できるわけです。

一般的な方法では、\dfrac{2}{x(x+1)(x+2)}=\dfrac{a}{x}+\dfrac{b}{x+1}+\dfrac{c}{x+2}などとおいた上で整理し、

2=a(x+1)(x+2)+bx(x+2)+cx(x+1) \Leftrightarrow (a+b+c)x^{2}+(3a+2b+c)x+2a-2=0

xについて恒等的に成立するための必要十分条件である

(a+b+c)=0,(3a+2b+c)=0,2a-2=0」を連立方程式として解いています。

しかし、降べきの順に整理する前の式である2=a(x+1)(x+2)+bx(x+2)+cx(x+1)に注目してx=0,-1,-2を代入すれば、必要条件2=2a,2=-b,2=2cを求められます。

これを利用したのが上の方法です。

もちろん、厳密には十分性の確認が必要ではありますが、省略しても実使用上に問題はないでしょう。

実際、有理関数の部分分数分解の可能性と一意性は(教科書に記載はないが)広く知られた事実です。素因数分解の一意性もそう。

もしそれを示さなければならないなら話は別ですが、実際に部分分数分解が必要な場面は大抵計算過程ですから、見据える問題の本質がその計算過程に宿るのでない限りは、プラグマティックに考えることも重要だと僕は思います。

少なくとも、素因数分解の一意性が教科書に記載されていないからと言って、解答でいちいち証明する人は多くないでしょう。実際この証明はけっこう難しいです。

(この方法を用いたとされるヘヴィサイドも、

「Why should I refuse a good dinner simply because I don't understand the digestive processes involved?」

という言葉を遺しています。和訳するなら、「消化のプロセスを知らないなら、食事の誘いを断れとでも?」というニュアンスになるのかな。

演算子法の理論が数学的厳密性を欠くことについて指摘されたときにこう反論したそうです。)


・分母が重根を持つ場合

工事中。


・余談

この方法ってあまり見ない(問題集の解答では大抵係数比較している)けれど、実は一般的なものなんだろうか、それとも塾や予備校では何か別のテクニックを教えているのか?なんて思ったのでちょっと調べてみたんですが、

d.hatena.ne.jp

なんかこれ、演算子法とか同軸ケーブルの発明で有名なヘヴィサイドが用いていた方法と同じみたいですね......

恒等式の係数決定なんだから数値代入法でいいじゃん」程度の軽い思い付きから生まれた方法が、ちゃんと名前のある計算技術だったことにはちょっと感動しました。

複素数平面の図形問題を初等幾何で解決する小ネタ

複素数平面は幾何問題の処理において問答無用の強さを発揮します。

最大最小問題なら、極形式を用いて強引に三角関数の最大最小問題に帰着させることが出来るし、証明問題(特に直交関係の証明)は、各点を複素平面上の位置ベクトルとして扱うことでただの計算問題へ帰着させることのできる恐ろしい武器です。

問題文の設定に一切複素数が絡まなくても、「確実に」解けることが解法選択の絶対条件とされる大学入試では、三角比や初等幾何では手を出しづらい場合は複素平面を用いて解決するのが定石となっているようです。

実際、いざ自分が受験生となった今では、こういう計算力だけでなんとかなる解法の安定感は何にも代えがたい笑。

しかし、中学校で習うような素朴な方法もまた面白いと思うのです。

今日扱うのは、複素平面を用いて解くことが推奨されるような、大学入試の図形問題を初等幾何で解決してみるという小ネタです。

任意の四角形ABCDに対し、その各辺を斜辺とする直角二等辺三角形\triangle PAB ,\triangle QBC, \triangle RCD, \triangle SDAの頂点P,Q,R,Sを四角形ABCDの外部にとる。
PR = SQ,PR \perp SQを示せ。

これは随分前に高校の補講で扱った問題。出典は旭川医科大学だったような気がします。

数IIIの補講だから、当然先生は複素平面を活用して色々問題を解くわけですが、僕は暇を持て余して片っ端から初等幾何的に解いた。その結果が以下の解法。


・初等幾何による解法

f:id:AzelAlbarn666:20170624180435j:plain

一方の対角線の中点と各辺の中点を考えたとき、中点連結定理と直角二等辺三角形の性質から、図の黄緑色の三角形は互いに合同であり、対応する辺のなす角は直角である。

故に、PR=QS,PR \perp QSが示された。


なかなか簡潔でしょう。これが初等幾何の醍醐味です。

物好きな人が居たら、同様の手法が他の問題にも通用するか試してみてください。