Azel's Note

ある高校生の数学ノート。

高校数学におけるチェビシェフ多項式

三角比/三角関数は便利だ。そしてなにより、美しい。

だが、僕の周りを見る限りでは、三角関数が苦手な人間は多い。数学アレルギーの原因の一つでもあるように思う。

ただ、本当に便利だし、興味深い性質を秘めている。三角関数に関連する入試問題も、そのバックグラウンドまで考えられるととても面白いものが多い。

とくにcosの性質は驚くべきものが多い。今回はそのひとつである、チェビシェフ多項式の話だ。

・チェビシェフ多項式の存在証明

一般的事実として、以下がある。

任意の自然数 { \displaystyle n} について、{ \displaystyle \cos n \theta}{ \displaystyle \cos \theta }{ \displaystyle n} 次式で表せる。

加法定理を知っていれば、「なんとなくそんな気がする」ような事実である。

この、 { \displaystyle \cos n\theta}{ \displaystyle \cos \theta } による表現 { \displaystyle T_{n}} をチェビシェフ多項式という。

(この由来であるチェビシェフという人は、幅広い分野に業績のある19世紀の人らしく、確かにこれ以外に幾つか名を聞いたことがあるように思う。(同一人物かどうかは定かでないが))

証明せずに済ますには少し大きすぎる定理なので、上の事実を証明してみよう。


{ \displaystyle n=1} のとき、{ \displaystyle T_{1}=\cos \theta } であり、

{ \displaystyle n=2} のとき、{ \displaystyle T_{2}=2\cos^{2} \theta -1 } であるから、{ \displaystyle n=1,2 }で確かに存在。

{ \displaystyle n=k-1,k} のとき、{ \displaystyle T_{k-1}}{ \displaystyle T_k } が存在すると仮定する。

加法定理より、

{ \displaystyle \cos(k\theta + \theta) = \cos k\theta \cos \theta - \sin k\theta \sin \theta}

{ \displaystyle \cos(k\theta - \theta) = \cos k\theta \cos \theta + \sin k\theta \sin \theta}

辺々を加えると、{ \displaystyle \cos(k\theta + \theta) + \cos(k\theta - \theta) = 2\cos k\theta \cos \theta }

これはすなわち、{ \displaystyle \cos(k\theta + \theta) + T_{k-1} = 2\cos \theta T_k }

{ \displaystyle T_{k-1}}{ \displaystyle T_k }{ \displaystyle \cos \theta} で表現可能であるから、

{ \displaystyle \cos(k\theta + \theta) }{ \displaystyle \cos \theta} で表現可能、従って{ \displaystyle T_{k+1} }は存在する。

よって、上の議論より、任意の自然数 { \displaystyle n }{ \displaystyle T_n }の存在が示された。 □


以上のとおりである。

余談だが、証明終了の宣言として、皆さんは何を使うのだろうか。

僕はこういう電子媒体に証明を記述するときはハルモス記号をよく使うのだが、模擬試験や定期テストでは通じるか不安なので「よって題意は示された」とか「等式は示された」と文で書くことにしている。

・チェビシェフ多項式の漸化式

上の途中式に現れるとおり、{ \displaystyle T_n } の一般項は隣接三項間漸化式に従う。

MathJaxのトラブルに見舞われたためにこれだけ画像になってしまったが、これが { \displaystyle T_n } を表現する漸化式である。

(同じ式に下小文字付きの項が3つ以上あると、なぜかMathJaxがうまく機能してくれない、解決法を知っている人がいたらぜひ教えてください。)

また、{ \displaystyle \theta = 2k \pi~~~ (k \in \mathbb{Z})  }のとき、{ \displaystyle \cos\theta = \cos n\theta =1 } であるから、

{ \displaystyle T_n } の各項の係数の和は1になるし、{ \displaystyle T_a - T_b = 0 }{ \displaystyle a~,~b} の値によらずこれを解に持つ。

・チェビシェフ多項式の利用①

大学入試にも、チェビシェフ多項式と関連の深い問題が多く出題されている。

僕の高校ではFocusGoldという問題集を買わされるのだが、それにはこんな問題が記載されていた。 

{ \displaystyle \cos \frac{2}{7} \pi + \cos \frac{4}{7} \pi + \cos \frac{6}{7} \pi = a ~,~  \cos \frac{2}{7} \pi  \cos \frac{4}{7} \pi  \cos \frac{6}{7} \pi = b }とする。(3) { \displaystyle a~,~b } を求めよ。』

(1)(2)は誘導なので省略した。出典は東京慈恵会医科大学。 和と積を求めよと言われている以上、何らかの方程式の解と係数の関係を用いるのであろうことは簡単に察しが付くし、その方程式はチェビシェフ多項式から簡単に導ける。

(Tips; 和と積を求める問題や、和と積の何方か一方が与えられた状態でもう一方を求めるような問いは、解と係数の関係、相加・相乗平均の不等式、対称式を用いると楽な場合が多い)

ちなみに、僕はあまり医大の入試が好きではない。解き方も、それを見抜くことも簡単なのに、計算だけが面倒なものが多いからだ。 その点で京都大学の問題は逆で、とても面白いものが多い。

以下は解答。


{ \displaystyle \cos \frac{2}{7}\pi \neq \cos \frac{4}{7}\pi \neq \cos \frac{6}{7}\pi \neq1    ~~~~~ \cdots(\ast)} である。

従って、これら3つを解に持つような三次方程式を考え、解と係数の関係から値を導けばよい。

{ \displaystyle \cos \frac{2}{7}\pi ~,~ \cos \frac{4}{7}\pi ~,~ \cos \frac{6}{7}\pi}偏角{ \displaystyle \theta} とすると、

{ \displaystyle 7\theta=2k\pi ~~(k \in \mathbb{Z})} であるから、これらは方程式{ \displaystyle \cos3\theta = \cos4\theta} の解。

方程式{ \displaystyle \cos3\theta = \cos4\theta} について、チェビシェフ多項式とその性質より、

{ \displaystyle \cos4\theta = 2\cos\theta \cos3\theta - 2\cos^{2}\theta+1 }であるから、

{ \displaystyle 2\cos\theta\cos3\theta-\cos3\theta - 2\cos^{2}\theta+1=0 }

{ \displaystyle \cos3\theta(2\cos\theta-1)-2\cos^{2}\theta+1=0 }

{ \displaystyle 8\cos^{4}\theta-4\cos^{3}\theta-8\cos^{2}\theta+3\cos\theta+1=0}

ここで、上の方程式は { \displaystyle \cos\theta-1} を因数に持ち、また{ \displaystyle (\ast) } が言えるから、

上の式の辺々を{ \displaystyle \cos\theta-1 } で割った式

{ \displaystyle 8\cos^{3}\theta+4\cos^{2}\theta-4\cos\theta-1=0}{ \displaystyle \cos \frac{2}{7}\pi ~,~ \cos \frac{4}{7}\pi ~,~ \cos \frac{6}{7}\pi} を解に持つ。

三次方程式の解と係数の関係より、

{ \displaystyle a = \cos \frac{2}{7} \pi + \cos \frac{4}{7} \pi + \cos \frac{6}{7} \pi = -\frac{1}{2} }

{ \displaystyle b = \cos \frac{2}{7} \pi  \cos \frac{4}{7} \pi  \cos \frac{6}{7} \pi = \frac{1}{8} }


複素数を用いた解答も考えられるが、今回はチェビシェフ多項式が主役のため割愛。

次回は京大の入試問題を解いてみる。